生物学者と弁護士、諫早湾の開門を語る

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干潟に高密度で生息する生き物について解説する佐藤教授。写真はゴカイの仲間

国営諫早湾干拓事業の漁業被害を認めた福岡高裁は、国に5年間の水門開放を命じた。2013年は、その開始期限である。日本ベントス学会自然環境保全委員会は1月12日に都内で、シンポジウム「有明海・諫早湾 日本初の大規模な環境復元の意義」を開催した。

ベントスとは、貝やカニなど水底にすむ生物のこと。干潟では環境を浄化し魚や鳥の餌となり、生態系を支えている。同委員会は一刻も早い開門を求めてきた。国内外の干潟再生活動とも連携して諫早湾の環境復元を目指す。

日本最大の干満差がある有明海では、速い潮流が良好な干潟環境を形成してきた。委員長を務める鹿児島大学の佐藤正典教授は、「有明海には20種以上の特産種がいる。諫早湾は国内屈指の高い生産力を誇る泥干潟で、ムツゴロウなど多くの絶滅危惧種の生息地だった」と、その価値を語った。

続いて、1997年の堤防閉め切り以降の「有明海異変」を現場で研究してきた熊本県立大学の堤裕昭教授と熊本保健科学大学の高橋徹教授が登壇した。

堤氏は「有明海の赤潮は明らかに増加している。河川水が海の表層にとどまるのが原因だろう」と発表し、堤防締め切りで潮流が減速した可能性を示唆した。

高橋氏は、淡水化した調整池に大発生する有害アオコを調査している。「池は緑色に濁り、年間30~40億円の税金を投入しても農業用水基準をクリアできない水質だ。それが水位調節のたびに海に排水されている」と指摘した。

水門開放は、確定判決である。しかし、国と干拓を進めてきた長崎県は公然と開門反対を唱えている。「よみがえれ!有明訴訟」弁護団の堀良一弁護士は「地域の食を支えていた『宝の海』が変貌して漁業関係者には自殺者も出ている大変な事件である。干潟再生だけではなく、もう一方の干拓を推進してきた人々にも国がきちんと対応すべきだ」と語った。

最後に佐藤氏は「諫早湾の開門は、従来の自然破壊型の開発を見直す画期的なチャンス。九州だけの問題ではないので、是非関心を持っていただきたい」と参加者に呼び掛けた。(オルタナ編集委員=瀬戸内千代)

2013年1月16日(水)11:38

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