草刈り機の回転刃がアートな時計に!「A+A CLOCK project」

農作業などに欠かせない草刈り機(刈払い機)。摩耗して寿命を迎えた回転刃を、芸術的な壁掛け時計として再生する試みに、山梨県北杜市在住の造形作家が取り組んでいる。

草刈り機はエンジンなどの動力で刃を回転させ、草をなぎ払う構造。使用する円盤状の刃は使い捨てで、摩耗するたびに交換が必要だ。この回転刃には軽量化などの目的で穴が開いているが、その形はメーカーや種類などによって様々で、まるで幾何学模様のようにも見える。

鉄造形作家の上野玄起氏は、この使用済みの回転刃に注目。自らも自然農を実践する上野氏は年に数枚回転刃を消費するが、ユニークな穴の模様が面白くて捨てられず、手元にたまっていった。

草刈り機の使用済み回転刃を再生した壁掛け時計(写真提供:上野玄起氏)

「このデザインを一から作るのには大変な労力がいる。何とか生かしたい」。そう思った上野氏は自身のアトリエで、汚れや残っている刃を落とし、塗装するなどの加工を施して時計に再生(写真)。すると近所の友人らが「面白い」と反応し、各自が持つ使用済みの回転刃が上野氏の下に集まった。その数は現在、100枚に上るという。

「都会に住む人がこの時計を見ると『すごいデザイン』と驚くが、草刈り機の回転刃だったとはまず気付かない(笑)。使用済み回転刃はそのままでは捨てられるだけだが、アートとして再生することで、農や物質循環をテーマとして表現することにもなる」と上野氏は話す。

上野氏はこの時計製作を「A+A CLOCK project」と名付け、初回製作分の10個を3月から1個8千円で販売。「A+A」にはアート(Art)と農(Agriculture)という意味を込めた。すでに3個が売れ、売上金の一部を環境保全活動に寄付している。

「多くの人に時計を見てもらいたい」と上野氏。展示する場所や機会を設けることが今後の課題だ。販売価格についても変更する可能性があるという。「この時計が都市と地方を結びつける、一つのきっかけになれば」と上野氏は願っている。(オルタナ編集委員=斉藤円華)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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