編集長コラム) アフリカでソーシャル・ビジネスに身を投じたCSR部員

ガーナで栄養改善プロジェクトを展開する味の素株式会社研究開発企画部専任課長の北村聡氏

味の素は2009年、西アフリカ・ガーナの子どもたちの栄養改善をしようと「ガーナ栄養改善プロジェクト」を立ち上げた。6月に開催された第5回アフリカ開発会議では、安倍晋三首相から賛辞が送られるなど、ソーシャル・ビジネスとしての期待が高まっている。CSR担当者で、現在はガーナ駐在員として事業を展開する北村聡氏に話を聞いた。聞き手=森 摂(編集長)

--CSR部員が実際に海外でソーシャル・ビジネスを始められたことは、画期的ですね。自ら手を挙げてガーナに行かれたのですか。

北村: そうです。 もともとはマヨネーズなどのマーケティングを担当していました。ずっと「会社の人格」を作るような仕事をやりたかったので、CSR部創設時に応募したのです。
CSR部に入って5年目、2009年に味の素が創業10 0 周年を迎え、この「ガーナ栄養改善プロジェクト」が立ち上がりました。ガーナ駐在は2011年9月に始まりました。

■最初の1千日で決まる

--現地の子どもたちの栄養状態はいかがでしょう。死亡率も高いのですか。

北村: 栄養が偏っていたり、不足していたりするので、痩せていて小さい子が多いです。保健所で身体測定を行うと、標準身長・体重の下限値を行ったり来たりしています。今は色々なワクチンがありますから、生き延びること自体はそこまで厳しくありません。

なぜ味の素が「離乳期」にこだわるのかというと、妊娠から子どもが2歳の誕生日を迎えるまでの3年間、つまり「人生最初の1千日間」が非常に重要だからです。この最初の1千日間の栄養不足による成長不良は、その後、取り戻すことが難しい。

2歳では30-40%の子どもが低身長になっています。低身長児は、免疫系や知能の発達が十分ではないことが多いようです。

ですから、味の素は、生後6カ月から24カ月の離乳期の栄養不足の改善に取り組んでいるのです。

ガーナで食べられている離乳食「ココ」

発酵コーンでつくるガーナの伝統的な離乳食「koko(ココ)」は、タンパク質や微量栄養素が不足しています。そこで、アミノ酸入りの栄養サプリメント「KOKO Plus(ココプラス)」を開発しました。ガーナの食品企業イエデント社に製造委託し、ガーナ産大豆を主原料にしてアミノ酸を添加しています。2012年4月に販売を開始しました。

商・工業が発展し比較的裕福な南部では、キヨスクのような小さな店舗500店で販売しています。貧困層の多い北部では、地元のお母さんたちのグループが他の商品と一緒に手売りしています(記事文末のコラム参照)。

森 摂(オルタナ編集長)

森 摂(オルタナ編集長)

株式会社オルタナ代表取締役社長・「オルタナ」編集長 武蔵野大学大学院環境学研究科客員教授。大阪星光学院高校、東京外国語大学スペイン語学科を卒業後、日本経済新聞社入社。編集局流通経済部などを経て 1998年-2001年ロサンゼルス支局長。2006年9月、株式会社オルタナを設立、現在に至る。主な著書に『未来に選ばれる会社-CSRから始まるソーシャル・ブランディング』(学芸出版社、2015年)、『ブランドのDNA』(日経ビジネス、片平秀貴・元東京大学教授と共著、2005年)など。環境省「グッドライフアワード」実行委員、環境省「地域循環共生圏づくりプラットフォーム有識者会議」委員、一般社団法人CSR経営者フォーラム代表理事、日本自動車会議「クルマ・社会・パートナーシップ大賞」選考委員ほか。

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