山本議員が伝えたかった「原発収束作業員の境遇」とは

園遊会で天皇陛下に手紙を手渡した山本太郎参院議員。手紙には東電原発事故による被ばくから子どもを守ること、福島第一原発で収束作業に当たる作業員の境遇を伝える内容がしたためられていたという。『原発依存国家』(「週刊SPA!」原発取材班著、扶桑社)には、収束作業員が直面する苛酷な現状が記されている。(オルタナ編集委員=斉藤円華)

『原発依存国家』(扶桑社新書)表紙

本書冒頭では福島第一原発で働く作業員が対談。年間被ばく線量の上限をたちまち使い切ってしまうような高線量の事故現場で、復旧作業に悪戦苦闘する実情が明かされる。

原子炉の温度計を交換する作業に従事した作業員は、たった30分で9ミリシーベルトも浴びた。被ばく隠しも横行。怪しまれないよう、ある程度被ばくする場所に線量計を置いておくが、そうして苦労しながら被ばく労働をしながらも「将来の健康に対する保証は何もない」状況だ。被ばく労働者の診察を長年行ってきた阪南中央病院の村田三郎医師は本書で「残念ながら(被ばく労働者の)健康被害は避けられない」と指摘する。

しかも2011年12月の政府による収束宣言以降、現場では経費削減が進み、作業用の装備の質がどんどん下がっていったという。作業員の給料も「多重下請け構造」により大半をピンハネされる。ある作業員は「(制服代などを天引きされて)月給14万円。危険手当もなし」という有り様で、「反原発運動が東電を責めるせいで、どんどん事故収束にかけるお金を削る方向に行ってしまう」と言い切る。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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