企業トップ自らジェンダー平等の推進を【ダイバーシティとジェンダー】

雇用の適正化で業績もアップ

以上の2社の取り組みを、WEPsの原則1の基準に沿って整理すると、次のような特徴がよく分かります。

第一に、女性のエンパワメントを進めてビジネスの発展を図るトップの方針が全社に向けて明確に示され、そのリーダーシップが強く発揮されていることです。これが、取り組みを大きく加速させる一番の要素です。

第二に、人事考課に踏み込んで女性の登用の改革を実行していることです。女性を妙に優遇する方策だとの批判もありますが、それは誤解です。改革は、管理職や幹部は男性が相応しいという考え方が能力のある女性の昇進を妨げているかもしれないと、トップが疑問を持ったところから生まれました。そして、女性の登用が進むと社内に活気が出て、業績にもよく反映されています。

この2社の経験を見ても、トップの決断で女性のエンパワメントの推進を人事考課の要素に組み入れることが、ビジネスの体質を強め、有効に機能することがよく分かります。WEPsの基準を活用して企業の経営を自己診断し、ステークホルダーの意見も取り入れて改善を急ぐ。そして、その成果をWEPs報告書などの作成によって「見える化」してみると、そこに企業経営の大きな可能性が秘められているのではないでしょうか。


【WEPs の原則1】 リーダーシップによるジェンダー平等の推進
a ジェンダー平等と人権について、ハイレベルの支援を積極的に行い、トップレベルの方針を指揮しましょう。
b ジェンダー平等に関する全社的な目標と対象を設けて、管理職の人事考課の要素として進展させましょう。
c 平等を進める企業の方針、プログラム、実行計画を発展させる際は、社内外のステークホルダーを参画させましょう。
d すべての方針をジェンダーに敏感な視点にしましょう。これは、女性と男性に異なる影響を与える要素とみなされているものです。
また、平等とインクルージョンをめざす企業文化を前進させましょう。

【おおにし・さちよ】博士(法学) 立命館大学教授 専門は憲法、ジェンダーと法・政策。主著に『女性と憲法の構造』(信山社、2006 年)、「企業による人権尊重の展開」(法學志林111 巻1 号、2013 年)など。

(この記事は株式会社オルタナが発行する「CSRmonthly」第2号(2012年11月5日発行)から転載しました)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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