強い神経毒性、生態系全体に影響? 『知らずに食べていませんか? ネオニコチノイド』

ミツバチ大量死との因果関係が指摘され、EUでは現在、使用が制限されている農薬ネオニコチノイド。植物の内部に浸透し、長期間にわたり強い神経毒性を発揮するこの農薬の特徴や最新事情を、イラストと共に分かりやすく解説した本『知らずに食べていませんか? ネオニコチノイド』(ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議=監修、水野玲子=編著、高文研刊、税込1296円)がこのほど刊行された。(オルタナ編集委員=斉藤円華)

『知らずに食べていませんか? ネオニコチノイド』(ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議=監修、水野玲子=編著、高文研刊、税込1296円)
『知らずに食べていませんか? ネオニコチノイド』(ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議=監修、水野玲子=編著、高文研刊、税込1296円)

ネオニコチノイドは無色透明で無臭の農薬。近年、農業の現場で急速に普及が進む。従来からある有機リン系と違い、分解しにくいために長期間効果が持続する。そのため、農薬散布の回数や使用量を減らすことができ、農協も使用を奨励する。

ところが、昆虫の体内で神経伝達物質のようにふるまうネオニコチノイドは、世界各地で起きたミツバチ大量死をきっかけに注目を集める。減ったのはミツバチだけでなく、トンボなどの益虫も減少したとの報告がある。同農薬の強い神経毒性は、生物多様性を損なうことが危惧されている。そればかりか、昆虫と似た神経構造を持つヒトにも影響を与える、という研究結果もある。

EUでは2013年12月から2年間、ネオニコチノイド系の一部の農薬について使用を禁止することを決めた。ところが日本では農薬メーカーが国に働きかけ、ネオニコチノイドの食品残留基準値を緩和しようとする動きが起きている。

本書では、ネオニコチノイドの特徴や使用状況に加えて、同農薬をめぐる最近の動向もまとめた。また、害虫の天敵を活用して農薬を減らす農法や、トキを保護するために水稲栽培でのネオニコチノイド使用量を9割削減することに成功したJA佐渡の事例なども紹介している。

同農薬をめぐっては先日もIUCN(世界自然保護連合)の検討チームが800本以上の論文を精査した上で「ネオニコチノイドの現在の使用状況は持続可能ではなく、生態系を損ないかねない」などとするレポートを発表したばかり。ネオニコチノイドへの理解を深めることが、問題解決につながるだろう。本書は、そのための最も平易でわかりやすい一冊だ。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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