人材育成はプロデュース力で【戦略経営としてのCSR】

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大久保 和孝(新日本有限責任監査法人CSR推進部長)

社会が求める人材像が大きく変化している。これまでは「西欧に追い付け追い越せ」をスローガンに富国強兵策や近代国家づくりなどに象徴される、欧米の先進的な知識を真似ることや専門知識を身に付けることが優秀な人材とされてきた。しかし、日本も経済大国となり、世界の価値観も大きく変化し複雑化してきた今、単に専門的な知識を会得しただけでは社会の期待に応えられない。課題を見つけ出し、解決策を模索できる創造力といった付加価値の高い人材こそが求められるようになった。

その前提には、①環境変化を敏感に感じ取り、②それを自分ごと化し、③行動に反映できるリベラルアーツ的思考力(本連載8号を参照)が必要である。

付加価値の高い人材の育成には、人材育成のあり方を抜本的に見直す必要がある。これまでのように講師が一方的に知識を伝達しても、効果的な人材育成はできない。多くの大学で行われている、知識を一方的に教える講義では、受講生の多くが「自分ごと化」できずに終わり、環境変化の激しい時代では、その知識すら、瞬く間に陳腐化していく。

例えば、「情報漏えいをどう防ぐか」という具体的な課題には意見が出ても、「組織のコンプライアンス上の問題は何か」という質問には「課題が抽象的すぎて分からない」という意見が出る。その結果、知識からは想定できないような問題を起こす。抽象的な課題に対し、自分なりに考え、解決策を明示する能動的な思考力を身に付けることで、想定を超えた問題にも柔軟に対応できるようになる。

近年、グループディスカッション、事例研修など多様な研修方法が導入されているが、それらは手法論に過ぎない。大事なことは、急激な環境変化に適応し、知識を実践で役立てられる人材育成の場を、いかにプロデュースできるかだ。取り上げるテーマ、置かれている状況、参加者のレベルによっても方法は異なる。人材育成という目的達成のために、最適な方法を考え、組み合わせ、全体視点からプロデュースする。与えられた知識をただ用いるという受動的な発想から能動的な思考ができるよう、受講生の意識を変革させることが成功のカギだ。

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2014年8月28日(木)11:21

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