日立、「留職」プロジェクトが働き方を変える

――やはり2カ月で、目に見える形の結果を出すことを求められていたのでしょうか。

清水:新興国に行く前に、スカイプで相手側と話し合いを持つのですが、やはり行ってから要求も変わってきます。

現地に行けば、優先順位や当社社員と話せば当然やってほしいことも変わってきたりもします。ただ、2カ月間できちんと結果を出してきてほしいとは、現地に赴く前に二人には話しています。

■ ボランティア5000人の管理システムを構築

――宮下さんはどちらに行かれましたか。

宮下さんの留職では、 「リプロダクティブ・ヘルス」の分野で性教育やエイズの分野で活動するNPOのスタッフ管理のためのデータベースを構築した
宮下さんの留職では、 「リプロダクティブ・ヘルス」の分野で性教育やエイズの分野で活動するNPOのスタッフ管理のためのデータベースを構築した

宮下:同様にインドネシアのジャカルタですが、私は、「リプロダクティブ・ヘルス」(性と生殖に関する健康)、性教育やエイズに対して活動しているNPOに参加しました。

本部はジャカルタですが、インドネシア全土に300弱程度の支部があります。 セミナーなどを開催して、避妊や性病に関する知識を身につけてもらうことを目的としています。

本部には50人程度のスタッフがいますが、インドネシア内には5000人程度のボランティアがいます。そのボランティアを含めたスタッフの情報を管理するためのデータベースの構築が目的でした。

――そういう意味では、本部組織の情報管理システムの構築という共通点はあるわけですね。

宮下:留職を決める前に、今、会社でやっている仕事に近いミッションを求められるので、同じようなミッションになるわけです。

――やはり、2カ月で結果を出してくるというのは、お二人にとって、かなりタフな仕事だったのでしょうか。

宮下:最初の1週間で、何を求められているのかをヒヤリングをして、それに対して、自分の最終ゴールを設定するのですが、1カ月程度は、相手側の要求が二転三転します。

一方、自分が会社でやっている仕事は、工程ごとに、きっちりと決められていますが、NPOの場合は、その点工程自体があやふやでフィックスしていません。その点は苦労したところです。

名島:今回自分が赴いたのはシステムの構築のためと分かっていたので、大枠としてのミッション以外は現場に行った時に、逆にブレイク・ダウンしていく方法をとりました。

ですからNPOの要求が、より実際的に詳細になっていくという印象でした。

逆にいえば、ここまでしかできないと思っていても、ここは困っているなということに関しては、自分でミッションを広げていったところもあります。

NPOとのやりとりは彫刻に似ていて、まずはおおざっぱに丸く削っていって、そこから細かく彫り進めるような感じでした。

■ 2カ月で形にする苦労も

――名島さんは、12人の情報システムですが、宮下さんは、50人程度の本部スタッフとインドネシア全土の5000人のボランティアという点で規模が違っていたのではないでしょうか。

宮下:現地に行ったときには、すべてのデータはオフラインで管理していると言われました。ということは、オンライン上でのデータベースの共有は全くできていなかったのです。

組織内にオンラインのネットワークがありませんでしたし、パソコンすらない地域もあります。

――お二人にとって、何が一番困難だったでしょうか。

名島:自分がここまでしたいという想いと現地の人の願いとをどうやって折り合いをつけて、きちんと形にして、どう最大限残していくかということでしょうか。

NPOの人々と話し合いながら同時並行で作っていくわけですが、そのバランスが一番難しかったことです。さらに自分が去って行ったあとにも、みなさんで使えるようにマニュアル化していく作業もあるわけです。

宮下:やはり、2カ月間で形として残してくることが、難しかったですね。また、パッケージとして残していくソフトウエアの扱い方やトラブル対処あるいはバージョンアップの仕方まで、マニュアルとして残していくのも大変でした。

■ 他人を巻き込むことでより良い結果に

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高馬 卓史

1964年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。総合情報誌『選択』編集長を経て、独立。現在は、CSR、ソーシャルビジネス、コミュニティ・デザインなどをフォロー中。執筆記事一覧

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