高齢者を活かす好事例ーーダイバーシティの現状(2)[山岡 仁美]

まず、定年近くになった従業員にも研修を実施している。その研修のひとつは「場所的自己発見研修」と呼ばれ、自身の性格や仕事ぶりを他者に指摘してもらい客観的に自身を見直し気づきを促す内容となっている。

定年後の従業員へのカウンセリングも充実させている。時間と費用がかかっても一人ひとり丁寧に話し合う場を設け、会社としての期待を伝える。それと同時に、個人の望む職務内容とのすり合わせを行う。カウンセリングは毎年徹底して実施している。

これらの他にも、工場等の技術部門では、ベテラン従業員と若手従業員でペアを組ませる等、技術・技能の伝承にも腐心している。

高齢従業員自身が自主的に前向きな活動を実施している。1点目は「憲章」を創設し、高齢従業員の進むべき方向性を示し、高齢従業員全員の意識を高めようとしていること。主な内容としては自ら率先垂範で若手の手本となる行動をとることや、地域への社会貢献等で構成されている。実際の活動事例として、オジさんたちによる本社ビル周辺の掃除活動等がある。

2点目は「知恵袋」と呼ぶ、高齢従業員の得意とする技術や事業分野を図表にまとめたものを社内のイントラネットに掲載していることが挙げられる。

これらの取り組みにより、次のような成果が得られた。たとえば高齢従業員にとって、あらためて自身を見直すチャンスが生まれた。自身が長年培ってきた性格や習慣は修正するのが難しいものの、周囲への気配りやおざなりになっていた挨拶に変化が見られる等、あらためて奮起を促すことができた。同時に、組織のコミュニケーションの向上につながる効果が表れている。

他にも、若手従業員が業務上の相談や質問をしやすくなり、社内のコミュニケーション促進の一助となっている。これにより若手従業員の意識やスキルも向上し、組織力が強化されている。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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