[書評:追跡・沖縄の枯れ葉剤]戦争犯罪に背を向ける米国

■米国は事実を認めず

沖縄での枯れ葉剤使用をめぐる「物的証拠」も見つかっている。13年6月には、沖縄市内のサッカーコート下の地中から錆びたドラム缶が掘り起こされた。以前は嘉手納基地の一部だった場所。枯れ葉剤が保管されたと見られるドラム缶にはダウ・ケミカルと書かれ、土と水のサンプルからは高い濃度のダイオキシンが検出された。

また、著者が退役米兵らの協力を得て探し出した米国の公文書は、枯れ葉剤が沖縄に保管され、日本に復帰する1972年に運び出されたことを裏付ける。大量に積み上げられたドラム缶から、枯れ葉剤が漏れ出ていた可能性もある。

ところが、これらの証拠や証言に対する米国の態度は「沖縄で枯れ葉剤が使用・保管・輸送されたことを示す文書はない」(米国防省)というものだ。また、米軍から返還された土地が汚染されていても、日米地位協定により、米国に原状回復義務はない。沖縄県民の健康への影響調査も行われていない。

そうした中で、今新たに沖縄・名護の辺野古に米海兵隊の新基地が作られようとしている。著者は米国の枯れ葉剤使用を「戦争犯罪」と断じる。米軍基地が何をもたらすのかを深く認識するために、必読すべき書である。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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