滋賀県では、戦後まもなく「日本の障害者福祉の父」と呼ばれる糸賀一雄氏らにより創設された近江学園で粘土を利用した造形活動が始まった。そんな滋賀の近江八幡市で2004年6月に築80年の町屋を改装し、滋賀県社会福祉事業団(当時/現・社会福祉法人グロー)が企画・運営するギャラリーとして開館したのが、「ボーダレス・アートギャラリーNO-MA」だ。(フリーライター・今一生)
障がいのある人の表現活動を一般のアーティストの作品と共に展示する世界的にも珍しい施設で、2007年春、滋賀県教育委員会から博物館相当施設の指定を受け、「ボーダレス・アートミュージアムNO-MA」と改称された。
「アール・ブリュット」は「加工されていない、生のままの芸術」を意味し、美術の専門的な教育を受けていない人が伝統や流行などに左右されずに自身の内側から湧きあがる衝動のまま表現した芸術のことを指す。
NO-MAは2006年から「障害者の芸術作品調査研究事業」を実施し、これまでに全国38都道府県303人の作家を調査した。中には「アール・ブリュット」として評価されたものもある。また、アジア地域でも作品調査を行っており、これまでに台湾や韓国との合同企画展も行っている。
2010年にフランスで開催した「アール・ブリュット・ジャポネ」展では、出展した63名の作家全員がこうした調査・研究によって発掘された。
今年3月には「アール・ブリュット☆アート☆日本2」と称した展覧会を開催。日本のアール・ブリュットとともに、ヨーロッパの著名なアール・ブリュット作家アドルフ・ヴェルフリの作品26点を特別展示した。
グローの広報担当者はこう語る。
「NO-MAでは、障がいのある人の表現活動の紹介に核を置くことだけに留まらず、一般のアーティストの作品と共に並列して見せることで『人の持つ普遍的な表現の力』を感じていただくという趣旨のもと、活動しています」
障がいのある人の芸術活動に関する様々な相談事には、グロー内のアール・ブリュット・インフォメーション&サポートセンターが応じている。
◆ボーダレス・アートミュージアムNO-MA
http://no-ma-abtalk.jimdo.com/