熊野古道の道普請、今こそ企業の力で

■CSRの社内浸透にも

運んだ土が、雨で流れないように「たこ」とよばれる道具で押し固める
運んだ土が、雨で流れないように「たこ」とよばれる道具で押し固める

―─道普請のボランティアに参加する企業は、どこの地域が多いのでしょうか。

山西:関西の企業が多いのですが、JTや三菱東京UFJ銀行、明治安田生命など、全国規模の企業も多いです。社内公募をして、東京から来る人もいます。

―─中京地区や関東の企業からのボランティアを増やすには何が必要でしょうか。

百瀬:道普請だけに誘うのではなくて、例えば小売業と「和歌山フェア」をやる、卸問屋と組む、スーパーで特産品を売る。お客さんは「今度行ってみよう」となります。そこでネットワークができます。お客さんが商品だけではなく、土地の文化や観光にも興味を持つようになります。従業員も「熊野古道を一度歩いてみたい」と思うでしょう。

山西:JTは和歌山で「企業の森」をやっていますが、「単純に山を手入れするだけでなく、いろんな取り組みをやりたい」ということで道普請をやってもらっています。

―─2015年度には、企業CSR担当者向けに、道普請の体験や参加企業との交流会などを企画しているそうですね。

山西:熊野古道の知名度はかなり上がりました。東京でも8割の人は知っていると思います。ただ、実際に行くのにはきっかけがほしい。東京からだと1泊でも可能ですが、熊野古道を楽しむには、2泊3日は必要です。だからこそ、たくさんの企業にきっかけをつくってほしいのです。世界遺産を自らの手で保全していただきたいのです。

百瀬:ユニーでも地域フェアをやりますが、地域の方とお客さんが共感し合わないと売れません。「共感」が大事なのです。「和歌山県が熊野古道を世界遺産にまでした」と、お客さんが我が事のように思えると、素晴らしいですね。

─―最近のCSRに求められていることは「会社ぐるみ」で参加することです。CSRを全社的に浸透させている企業はまだ少ないので、多くの社員が参加することが大事なのです。

山西:JR西日本は社員だけではなく、OBや家族で参加してくれています。作業は、簡単で誰でもできますし、しかも熊野古道を体験でき、歴史も学べます。

百瀬:ちょっと「非日常」なのがいいですね。ディズニーランドに行くような感覚。温泉に入ってお食事をして、結構楽しいですね。組合が福利厚生を兼ねて道普請に来るのも良いかもしれないです。

これからは企業間の「コラボレーション」の時代です。ユニーはソフトドリンクで「1円寄付」をやっていますが、飲料メーカーが、ライバル同士でも頑張って協力してくれるのです。ライバル企業の担当者同士が集まって寄付先を訪れる。そんなつながりが、熊野古道を通じてもできたら、とても素晴らしいです。

百瀬則子 1980年4月、ユニー入社。2006年、環境社会貢献部部長に就任。2014年、ユニーグループで初めて女性の執行役員に。
山西毅治 2010年4月、和歌山県観光局観光振興課長に就任。2014年4月、和歌山県観光局長、現在に至る。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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