■多様なステークホルダーの協働によるSI
新技術・新素材という科学技術上のテーマに限らず、新しい仕組み/ サービスの開発、新たな社会システムの構築/再編成もSI の重要なテーマです。政府による社会・福祉政策から、産業レベル、個々の組織におけるマネジメントレベル、さらに多様な組織間での恊働など、幅広く議論されています。
SIを論じる基本的な視点は、主に(1)国家レベルにおける公共政策(主な分析対象は政府・行政機関)、(2)市場レベルにおけるビジネス活動((主な分析対象は企業やNPOなど)、(3)コミュニティレベルにおける社会活動(主な分析対象は市民社会組織) の3 タイプに分けられます。
本研究は(2)の視点からSIにアプローチしており、SIを「社会的課題の解決に取り組むビジネスを通して、新しい社会的価値を創出し、経済的・社会的成果をもたらす革新」と定義しています。
NPO法人北海道グリーンファンドの風力発電事業、NPO法人スペースふうのリユース食器事業、ヤマトホールディングス及びヤマト福祉財団の障がい者就労支援事業の3事例を対象に調査分析を行い、SIの創出と普及のプロセスを次のように整理しています。
創出プロセスについて。SE(1人/複数人のチーム) が、社会的課題を認知し(フェーズⅠ)、解決するために企業、NPO、資金提供機関、政府・行政などの様々なステークホルダー(SH) に働きかけていきます。
その社会的ミッションに賛同し、地理的に近接するSH が、様々なアイデアや資金の支援を行いながら集まり、イノベーションを生み出す「SIクラスター」と呼ばれる組織の集積状態を形成していきます。
SE はこの場を通じた協働によって、新しい社会的事業(新たな社会的商品・サービス、課題解決の仕組み) を開発していくのです(オープン・イノベーション)(フェーズII)。
次に普及プロセスについて。創出された新事業に共感し、その思いや価値を支持する「ファン」が生まれます。
SE は、価格や商品・サービスへのアクセスなど、人々が関わりやすい仕組みを示して継続的な利用者を増やし、市場社会における支持を広げていきます(フェーズIII)。
SE とSH 間の相互作用はSH 側の意識変化・行動変容を起こし、他地域での取り組み(セカンダリー・イノベーション)が生まれていきます。こうして新しいビジネスモデルが普及していくと、従来の社会関係に変化が起こり、それに伴って制度が変更されていきます。(フェーズIV)。
SE は、創出と普及のプロセスを通じてチェンジ・エージェントとしての役割を果たしており、両プロセスを連続してみていくことが重要です。
(この記事は、株式会社オルタナが2014年1月6日に発行した「CSRmonthly 第16号」から転載しました)