30年かけて森と関わる会員を募集――東京美林倶楽部[岩崎 唱]

30年の間には家を建てる人やリフォームする人もでてくるだろう。その際に縁がある檜原産の木材を使いたいという方も少なからずいるはずだ。倶楽部会員をロイヤリティの高い顧客と見ることもできる。30年という時間の中に、様々なビジネスチャンスが転がっている。そこまで企んでのプロジェクトだ。

東京チェンソーズが、このプロジェクトで実現を目指すのは、「補助金に頼らない林業」だ。悲しいことに現在の林業は、補助金なしてはにっちもさっちもいかないことが多い。補助金のありがたさはNPO法人である当団体も身にしみて理解している。しかし、補助金があるがゆえに本来、理想とする森づくりがおかしくなり、補助金を得るためだけの施業をしなければならないこともあるようだ。

本来は、補助金に頼らず自立した経営ができるのが、当たり前といえば当り前。その当たり前が実現できないのが、今の林業とも言える。東京美林倶楽部の事業で、補助金なしの林業が実現できるのかどうかが、これからの青木さんたちの大きな課題だろう。

東京美林倶楽部のように、一種の観光サービス的な要素を付加しながら森づくりを行う試みは、林業にとって一つの選択肢だと思う。もちろん東京という大都会に隣接しているからこそ、できることだと思うが、その地の利を活かす試みだ。こうした活動は、林業に不足している「人目を引くニュース」になる。ちなみに第1期の募集は100名で、ほぼ定員に達したそうだ。来年には第2期の募集を行う。東京チェンソーズの夢のある挑戦に拍手を送るとともに、気長に応援していきたいと思う。

■東京美林倶楽部
http://birin.club/

フリーランスのコピーライター。「緑の雇用担い手対策事業」の広報宣伝活動に携わり、広報誌Midori Pressを編集。全国の林業地を巡り、森で働く人を取材するうちに森林や林業に関心を抱き、2009年よりNPO法人 森のライフスタイル研究所の活動に2018年3月まで参画。森づくりツアーやツリークライミング体験会等の企画運営を担当。森林、林業と都会に住む若者の窓口づくりを行ってきた。TCJベーシッククライマー。

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