スッポン、名は知られるも知られざる生息状況ーー私たちに身近な生物多様性(10)[坂本 優]

坂本 優
生きものコラムニスト
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写真E:都内で撮影した個体。左上に写るお菓子のパッケージと見比べると大きさを実感できる

写真E:都内で撮影した個体。左上に写るお菓子のパッケージと見比べると大きさを実感できる

写真E、Fも、都区内の水辺だ。Eの画面左側、草に引っかかっている白い四角片は、お茶菓子などにする干し梅を個装していたパッケージで、長辺約6.5cm。パッケージをこのサイズまで拡大すると右側のスッポンの甲羅の横幅は25cm。甲長は35cm近くか。それにしても具体的な大きさを推測する比較対照物が、本来、そこにあるべきではない煙草の吸殻、レジ袋、菓子のパッケージというのも、残念な現実だ。

Fは右下にスッポンがいて、左上にカルガモがいる。カモと比べてサイズ的に見劣りせず、重量感ではむしろ圧倒しているのが見て取れる。

写真F:こちらも都内で撮影したスッポンの個体。左上に写っているのはカルガモだ

写真F:こちらも都内で撮影したスッポンの個体。左上に写っているのはカルガモだ

こうやって観察していると、これほど存在感のある生きものが、大都市の住宅街の水辺で静かに暮らし続けていることに、驚きとある種感銘を禁じ得ない。そして彼らもまた我々とともに、生命のつながりの環を形づくっているのだ、と改めて実感する。古くから食卓にのぼっていたのは事実だが、単に「滋養強壮の食材」というだけではない姿が、そこにはある。しかし、その彼らの生きる世界も大きく変わりつつある。

学生時代、不忍池で、カワウの観察がてらカルガモの親子を見ていたおり、同行の大先輩が、「時々、子ガモが急に見えなくなることがある。それは、水中に巨大なスッポンがいて、引きずり込んでいるからだよ。」と、「池の主」を語るようにつぶやいたことがあった。

その目は、「そんな大きなスッポンを見たことはないだろう」というように笑っていた。

当時の私は、そもそも「野生」のスッポンを見たことがなく、雛を水中に引きずり込んで食べている姿は想像もつかない。よく冗談を言う先輩だったこともあり、その巨大スッポンについては、ガメラなどのイメージと重なった、今でいう都市伝説の不忍池バージョンというイメージで聞いていた。

近年、不忍池には外来のカミツキガメやブラックバスなども生息するという。南岸のハスの観察池の西では、25cm内外の甲羅を背負ったアカミミガメもよく甲羅干しをしている。いずれも餌となる生物など、スッポンとかなり競合していることだろう。

カルガモの雛が突然水中に消えたとしても、スッポンが犯人であるとは、かつて以上に断定し難い。もし今、この池で観察会をご一緒したならば、先輩は、どんな都市伝説を語ってくれるのだろうか。

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坂本 優
生きものコラムニスト
1953年生。東京大学卒業後、味の素株式会社入社。法務・総務業務を中心に担当。カルピス株式会社(現アサヒ飲料株式会社)出向、転籍を経て、同社のアサヒグループ入り以降、同グループ各社で、法務・コンプライアンス業務等を担当。2018年12月65歳をもって退職。大学時代「動物の科学研究会」に参加。味の素在籍時、現「味の素バードサンクチュアリ」を開設する等、生きものを通した環境問題にも通じる。(趣味ラグビー 関東ラグビー協会理事)

2015年7月8日(水)14:56

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