IUCN(国際自然保護連合)が定義する「絶滅のおそれのある野生生物のリスト」には、2014年11月時点で約2万2千種が登録されている。生物多様性の確保は喫緊の事項だ。本コラムでは、味の素バードサンクチュアリ設立にも関わった、現カルピス 人事・総務部の坂本優氏が、身近な動物を切り口に生物多様性、広くは動物と人との関わりについて語る。(カルピス株式会社 人事・総務部=坂本 優)
ウナギと聞くと私には思い出される言葉がある。それは、「食うか削るか」という言葉だ。
天狗党と諸生党に分かれて凄惨な党派争いを繰り返した幕末維新の水戸藩。その争いは、尊王攘夷など思想的なもの、あるいは国政や藩政に関わる政策的なものなどではなく、権力と利権をめぐる「食うか削るか」の争いだった、との冷めた見方が当時からあった。
勝って権力を握り鰻を食うか、負けて権力から遠ざけられ、鰻を焼くための串を削る内職をするか、の争いだったというのである。
実際には、串を削るどころか、権力を失った側は命を奪われ、政局の変化に伴う互いの殺戮により、水戸藩で明治に生き延びた人材はなかった、とまで称される訳だが、そのような争いの本質を、鰻を例えに表現するということに、日本人の鰻に対する、熱くて強い思い入れを感じる。