黒地に書くおしゃれな手帳、弱視のベンチャー経営者が開発

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弱視などの視覚障がい者や老眼の人は、白い紙ではまぶしすぎるなど、暗所で文字を読むのが困難なことがある。アーチャレジー(横浜市)は2015年2月、そんな視覚に困難を持つ人のための白黒反転手帳「TONE REVERSAL DIARY」を開発した。書きやすく見やすいよう、黒い紙に白色やパステルカラーのペンで書き込むことができ、罫線や日付は通常より太めの白で印刷されている。(ライター・遠藤一)

安藤将大さんは、「弱視の世界では白黒反転した文字が見やすいのは常識。だが日本では黒紙に書き込め、罫線のある文具は存在しない」と語る。表紙はどんな性別でも使えるようにシンプルにした

安藤将大さんは、「弱視の世界では白黒反転した文字が見やすいのは常識。だが日本では黒紙に書き込め、罫線のある文具は存在しない」と語る。表紙はどんな性別でも使えるようにシンプルにした

■ 先端技術を障がい者に

アーチャレジーの経営者は二人。先天性の視神経の障がいである「朝顔症候群」を持つ東京工科大学4年の安藤将大さん(21)と、視野が次第に欠けてくる後天性の「網膜色素変性症」を持つ都内大学4年の浅野絵菜さん(22)だ。

業務内容は自分たちの特性を生かした、障がい者用の製品やサービスへのコンサルティングと、障がい当事者のニーズに合った製品作りの二本柱である。

高校の時から学内の障がい者を集め、学校施設の改善などにかかわってきた安藤さんは「問題に対して、今までにない方法はないか」と考え、活動するのが好きだった。

大学に入り、プログラムや先端技術ビジネスを学ぶコンピューターサイエンス学部に入ると「こんなにある技術が障がい者に還元されない。もっと私たち自身が使いやすい方向を作れないか」と思うようになった。

芸術文学を学ぶ浅野さんとは大学間のサークルで出会い「自分の持っていない芸術的なセンスや、中途障害がいの理解の仕方を知っている」(安藤さん)と感じた。

二人で一緒に視覚障がい者向けサービスのプランを作り、ビジネスプランコンテストに参加すると入賞し、2015年2月に起業した。

■ 視覚障がい者以外のニーズも

弱視の人たちの間では「白黒反転した文字は見やすい」というのは常識だ。安藤さんは言う。

「手帳によるスケジュール管理は社会人として必須。でも、視覚障がい者が社会進出していく時に、使いやすいものがまったく無かった。黒いカレンダーはあっても白い紙に黒いインクを印刷したもので、インクをはじき書き込みできない。真っ黒な無地のノートも市販されてはいるが、罫線が入っていたり、内容が印刷されたりしたものはない」

2015年2月に試作品を作ると、老眼の人からも「この手帳のほうが見やすい」という声があり、視覚障がい者以外にもニーズがあると感じた。3月には、4月はじまりの2015年版を300部製作、テストマーケティングとして発売した。ネット販売のほか、福祉法人や福祉展での販売が中心だ。

デザインは芸術関連が得意で実際に暗い所では見づらい浅野さんが担当した。外部に頼むより、当事者自身がデザインした方が、より使いやすい手帳になると考えた。

「手帳は常に持ち歩くもの。見やすいと同時に、持っていて『いいな』と思えおしゃれであることが大事。例えばフォントはあまりおしゃれにしてしまうと読みにくいが、ゴシック文字だと可愛くもなくつまらない。どこまで見やすく、どこまでおしゃれにできるか、試行錯誤した」(安藤さん)

■ 当事者ならではの工夫を随所に

視覚障がい者として、何の情報がほしいか考えた時に「休日がわかること」を重要視した。年間のカレンダーのページは細かすぎて、ほとんどのユーザーは数字までは見えない。そこで休日の部分を白抜きにして、パッと見でわかるようにした。

マンスリーのページは、視覚障がい者でも晴眼者でもどちらも使いやすいように、TODOリストのボックス線を自分で引き、サイズを変えられるようにした。

現在はクラウドファウンディングサイトで2016年版のうち1000部を作るため資金を募っている。日本ではそもそも黒い紙が需要として少なく、一番高い上質紙しかない。同時に白いインクの需要も無く、印刷できる会社自体が少ない。

量をたくさん刷ってから営業をかけるリスクを負えず、今年は資金を募ったという。1月はじまりの手帳を9月に発売する予定だ。

2016年版は、マンスリーとフリーページに、レフトタイプのウィークリーを加え、ページ数は3倍になった。A5サイズで、価格は白ペンとのセット販売で2000円前後を予定、単品のみもある。

今後の事業展開について安藤さんは語る。

「2017年版に向け老人ホームなどでもニーズ調査をして、老眼など障がい者ではないが見えにくい『隠れ視覚障がい者』にも広げていきたい。シンプルなので普通の文具店では手にとってもらいにくいかもしれないので、メガネストアなどに置いてもらうことも考えている。糸口が見え、2016年版が売り切りできれば2017年版では万単位で販売したい」

◆アーチャレジー
◆クラウドファウンディングページ

2015年8月20日(木)15:44

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