[書評:エネルギーの世界を変える。22人の仕事」若手が挑む、日本の自然エネルギー普及

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FIT(自然エネルギー電力の固定価格買取制度)、そして来年4月の電力小売完全自由化と、着実に改革が進む日本のエネルギー政策。自然エネルギーは試行錯誤を重ねつつ、時に逆風に遭いながらも導入が進む。『エネルギーの世界を変える。22人の仕事』(監修/諸富徹、編著/若手再エネ実践者研究会 学芸出版社刊、税込1944円)は、高い志を持って自然エネルギーの普及に取り組む事業者、研究者、行政職員ら22人の「生の声」をまとめた本だ。(オルタナ編集委員=斉藤円華)

■自然エネルギー事業は苦難の連続!?

『エネルギーの世界を変える。22人の仕事』(学芸出版社刊)

『エネルギーの世界を変える。22人の仕事』(学芸出版社刊)

ひとくちに「自然エネルギーを仕事にする」と言っても、その職場や仕事内容はさまざまだ。薪ボイラーの設計・販売、温泉発電事業、発電事業への融資、市民から出資を募る際のコーディネート、政策設計、限界集落における自然エネルギー事業の開拓、等々・・・。

2012年のFIT施行以降、自然エネルギーの導入が加速する日本だが、それでも大規模水力を除く自然エネルギー電力の導入量は数%に過ぎない。普及の本格化に向けては、経験や知識が絶対的に不足しているのが自然エネルギー分野の現状といえる。

本書に登場する20〜40代の「若手再エネ実践者」は、そうした未開拓分野ゆえの逆境をものともせず、各地に眠る未利用の自然エネルギーを発掘し、利用しようと果敢に挑む。

自然エネルギーは地産地消することで、化石燃料の購入費や電気代などとして地域外に流出するお金が減り、地域経済の活性化が期待できる。とはいえ実際に自然エネルギー事業を立ち上げ、回すのは困難の連続だ。それでも「社会を良くしたい」「安全な社会を未来に残したい」「地域を豊かにしたい」という強い意志が、これらの挑戦を支えている。

■「誰からも奪わない」仕事

もとより自然エネルギー普及への努力は、FIT導入以前から続けられていた。先行する海外の事例に学ぶことで「基礎体力」を培ってきたと言える。自然エネルギーのシンクタンクに勤める人は「長く続けることこそが(政策実現や人材育成で)大きな意味を持つ(134頁)」と指摘する。

FIT導入のための法案が閣議決定されたのは2011年3月11日、奇しくも東日本大震災が起きた日だ。本書には、3・11が自然エネルギー分野に飛び込むきっかけとなった人も登場。「福島県農民連」は東電原発事故を契機に、地域出資による太陽光発電事業に着手。同事業に従事する職員は、外部資本が地域から利益を持ち出すのではなく「だれからも奪わない暮らしを、ここ福島の農村でつくる」(74頁)のが私のビジョンだ、と説く。

太陽光発電をめぐっては最近、景観や地域住民を無視する形で乱開発が生じる現状も伝えられている。自然エネルギーの導入にともなうこれらの歪みを是正する上でも、地域や未来のために進んで仕事をする若手先駆者たちの努力に光を当てる本書の刊行は、時宜を得ていると言えよう。

2015年9月25日(金)14:20

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