英国で議論、持続可能な「砂糖調達」とは――下田屋毅の欧州CSR最前線(46)

現在サプライチェーン上では、パーム油、カカオなどの原材料の問題がクローズアップされ、その解決のために様々な努力がなされているが、砂糖はどうだろうか。もしかしたら「砂糖?」と思う方もいるかもしれない。しかし英国では、EUの動向も踏まえ「持続可能な砂糖」に関するカンファレンスが開催されるなど、砂糖の調達上発生している問題について議論がなされている。(在ロンドンCSRコンサルタント=下田屋毅)

■人口増大や気候変動で調達が困難に

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「持続可能な砂糖調達」については何が問題となっているのだろうか。今後さらに予想される世界の人口の増大とそれに伴う食料や日用品の需要の増加があり、気候変動や生態系の変化などで砂糖原料の確保は難しくなるとされている。

消費の拡大と相反して世界で飢えに苦しむ人々も増大し、需要にこたえるために土地や水などの資源の更なる競争が強まる懸念がある。

砂糖産業についての問題は、歴史がとても古く、欧州の植民地政策の時代にさかのぼる。砂糖原料の生産において歴史上奴隷労働などが行われ、欧州各国の需要に応え繁栄を支えてきた経緯がある。

この植民地時代の償いの意味合いもあり、EUでは1962年共通農業政策(CAP)が、EU加盟国の農家を保護するとともに、EU諸国の旧植民地の地域(アフリカ、カリブ海、太平洋諸国)の砂糖の生産において保護する特恵的地位を与えていた。

しかし、EUにおいては砂糖分野での国際競争力の低下や砂糖価格の上昇を招き、砂糖輸出国であるオーストラリア、ブラジル、タイなどとの競争、製品製造で砂糖を大量に使用する食品・飲料企業からの圧力も受けていた。これに対応するためEUは2015年末まで、旧植民地の砂糖農家への保護を終了する方針としている。

これらの旧植民地の砂糖農家は小規模農家がほとんどであり、価格の低下など国際的な競争に晒され困難な状況になることが予想される。英国政府によると、この影響により2020年までに20万人もの砂糖農家が貧困に陥る可能性があるという。

■先住民がプランテーションの強制労働下に

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下田屋 毅(CSRコンサルタント)

欧州と日本のCSR/サステナビリティの架け橋となるべく活動を行っている。サステイナビジョン代表取締役。一般社団法人ASSC(アスク)代表理事。一般社団法人日本サステイナブル・レストラン協会代表理事。英国イーストアングリア大学環境科学修士、ランカスター大学MBA。執筆記事一覧

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