世界のソーシャルビジネス)大地と一体化、超省エネの丸い家

スイスでも日本と同様に、快適な省エネ住居への関心が益々高まっている。屋根を土で覆い、大地と一体化したようなアースハウス(大地の家)も興味深い試みだ。傾斜や起伏のある土地を掘って家を作り、その土を屋根に被せる。土は家の断熱を向上させ、緑化すればCO2削減にも一役買う。アースハウスは、スイス人建築家、ペーター・フェッチ氏が考案した。スイスを中心にドイツなども含め、現在90軒以上建てられている。(チューリヒ=岩澤 里美)

2006年、チューリヒに建てた一軒家 (4LDK)。周囲は四角い家ばかりで丸みが際立つ
2006年、チューリヒに建てた一軒家 (4LDK)。周囲は四角い家ばかりで丸みが際立つ

アースハウスの主な建築材はコンクリートで、屋外の寒暑が屋内に伝わりにくく、すきま風もない高断熱・高気密の作り。室内は、夏は涼しく冬は暖かく保たれる。家電の省エネに関しては、スイスでは、とくに暖房費節約が重視される(スイスの家屋は通常、夏は快適で、冷房は不要)。

「暖房費は通常の家だと年平均約23万円ですが、地熱システムを設置すれば約10万円、アースハウスで地熱を利用するとたった5万円ほどで済みます」とフェッチ氏は言う(1スイスフラン=130円計算)。

コンクリートは噴射式で、金属の骨組みに数回噴きかけて厚さ15~20cmにする。噴射式コンクリートはトンネルなど土木分野で使われることが多いが、フェッチ氏はジュネーブでこの手法を使った家を見てひらめき、工夫を重ねた。屋根の部分は、固まったコンクリートの上に防水と根の生長防止のための薄い層を作ってから、断熱用にリサイクルガラスを20~30cm敷く。

最後にフリースのマットで覆って土を被せる。その他の壁は、コンクリートの厚さを調整して石膏で仕上げる。「決まりきったスタイルではない家をと思い、丸い形にしました。土で覆うには四角い家では難しいこともありましたので」と話すフェッチ氏は、1978年にアースハウス第1号(自宅)を建てた。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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