企業家精神とサステナブル・イノベーションを考える――大企業に求められる、ソーシャル・イノベーションのスケールアップ

大企業の役割は、自らがもつパワーを活用して社会的ニーズに応え、スケールアップしていくことだ。今はローカルで小さな取り組みにとどまっているCSR活動はグローバルに展開すべきであるし、それが可能だと思われる。フォーチュン誌に掲載されているような企業では、取り組みをアップスケールさせ始めている。グローバル課題に取り組んでいくために、次のようなことが求められる。

(1)商品・マーケットを社会的課題に対応するようにデザインしなおすこと。新しい市場を開拓し、貧困層を巻き込み、ビジネスの成長を通して貧困層の収入を増やす、市場本位のアプローチである。

(2)バリューチェーンの生産性を上げること。民間セクターだからこそ、バリューチェーンに貧困層の人々を巻き込んでいくことができる。バリューチェーンを通して人権問題や貧困問題に取り組み、インクルーシブ・ビジネスを実施することが求められる。

(3)政府・企業同士・NPO・コミュニティなどによるローカル・クラスターを創ること。ローカルレベルで強固なクラスターをつくることは企業の生産性を上げることになる。

ローカル・クラスターについては、さらにこのような議論もある。貧困層に魚を提供するのも、魚の釣り方を教えるのもいずれも十分ではなく、貧困層の人々が魚をもっと販売し収入を増やすことが必要である。

そのためアントレプレナーを育成し、小さな企業を育てていくインキュベーショングループを構成し、ローカル・クラスターとして産業のエコシステムをつくるというマルチステイクホルダーアプローチが有効であるというものである。ここでいくつか事例を示したい。

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齊藤 紀子(企業と社会フォーラム事務局)

原子力分野の国際基準等策定機関、外資系教育機関などを経て、ソーシャル・ビジネスやCSR 活動の支援・普及啓発業務に従事したのち、現職。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了、千葉商科大学人間社会学部准教授。

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