温暖化防止へ、事業者に「漏えいフロン」報告義務化

中でも使用時の漏えいが多いのは業務用の冷凍空調機器だ。経済産業省が09年に実施した調査では、「別置型ショーケース」に充填した代替フロンが使用後約6年で抜け切ってしまった。業務用機器からの漏えい量が、20年にはCO2換算で2千万トン弱に達するとの予測もある。

■温暖化防止へ脱フロン促す
「従来のフロン類規制はオゾン層保護が目的だったが、今後は温暖化防止が焦点となる。中長期的には冷凍空調機器の脱フロン化が目標。今ある機器は保守点検しながら使い続け、徐々に非フロン類使用機器に転換していくべきだ」
23日に環境省が都内で開いたフロン排出抑制法に関するセミナーで、群馬大学の西薗大実教授は漏えいフロン量報告制度の意義をこう語った。

フロン排出抑制法では、業務用の冷凍空調機器を使用する事業者に対して、3カ月に1回以上の割合で目視などによる簡易点検を義務付ける。専門知識を持つ者による定期点検も、一部を除き年1回以上行うよう求める。

漏れが確認された場合、修理を行わないままフロン類を充填することは禁止。漏れた量は、登録制のフロン類回収充填業者が発行する証明書をもとに算定、報告する仕組みだ。点検と報告を行わない事業者は都道府県から指導や勧告を受け、是正されなければ罰則もある。

法ではこのほか、フロン類の製造業者などには再生利用他による新規生産量の削減などを求める。また冷凍空調機器メーカーにも非フロン類、およびGWP(地球温暖化係数)が低い冷媒への転換を促していく。

これらの取り組みを通じて、国はCO2に換算した国内のフロン類使用見通し量を、現状の約5千万トンから25年までに3650万トンへと抑制する考えだ。

■報告の負担軽減が課題

フロン排出抑制セミナーで
フロン排出抑制セミナーで

セミナーでは、フロン類削減で先行する事業者の取り組みを紹介。イオンとローソンは店舗で使用する冷凍空調機器を自然冷媒(CO2)に順次更新している。ローソンは今年度に新規出店する約1千店の内、7割で自然冷媒を採用する計画だ。

冷凍空調機器メーカーのダイキンは、GWPが相対的に低い代替フロン冷媒「R32」の普及を促進。パナソニックは自然冷媒機器に力を入れる。自然冷媒機器の導入に初期投資はかかるが、冷媒破壊回収量がかからないため、長期的に考えるとフロン類使用機器を導入するよりも安くなるという。

しかし機器を使用する事業者にとっては、新たに報告業務が増えることになる。対象機器の台帳を作り、点検履歴や漏えい量などを記録するのは手間だ。国は報告書作成支援ツールを公開。機器メーカーも点検や台帳作成などを支援するアプリやサービスを提供するが、報告に伴う負担の軽減は制度浸透の課題といえそうだ。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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