ツナ缶最大手のタイ・ユニオン・グループは12月13日、同グループが販売するすべてのツナ製品の調達を持続可能な方法で行うと発表した。2020年までに少なくとも75%の商品を持続可能な方法で調達する方針だ。(編集・翻訳:オルタナ編集部=小松遥香)
今後の持続可能な調達に向けて、タイ・ユニオン・グループは9000万ドルを投資する。環境負荷の少ない漁業や持続可能な漁業を行う漁師を育てるなどの漁業改善計画を世界中で実施していくという。
同グループが定義する持続可能なマグロとは、まず海洋管理協議会(MSC)認証を取得した漁業者から買い付けるマグロ。そして、漁業改善プロジェクト(FIP)に加盟している漁業者から買い付けるマグロだ。MSC認証を取得する準備過程の企業がFIPに加盟している。
同グループのティーラポン・ジャンシリCEOは「マグロは最も手に入りやすいタンパク質であり、何百万人ものタンパク質を補うことができる。実際、栄養補給や雇用をマグロやマグロに携わる仕事に頼る人は少なくとも10万人いる。今回の多額の投資で、漁業界全体が変わっていくだろう。我々の海洋の持続可能性に対する強いコミットメントを示していく」と話す。
「現在、MSC認証を取得し、マグロ漁を行う会社は世界に11社しかない。この11社が供給しているMSC認証マグロは世界で陸揚げされるマグロの14%を占める。持続可能な調達を増やすことは、加工業者や小売業、消費者を含む漁業界全体に良い影響をもたらすだろう」と同グループでサステナブル・ディベロップメント担当責任者を務めるダリアン・マクベイン氏は話した。
新しい方針で何が変わるのか
漁業改善計画への新たな投資によって変わることは色々ある。タイ・ユニオン・グループは、トレーサビリティが持続可能な漁業の柱であると考えている。サプライチェーンの透明化を図るために新たなデジタル技術に投資していく予定だ。
トレーサビリティを完全にデジタル化することで、同グループは違法漁業や密漁対策を行う。すでにトレーサビリティのデジタル化は、漁業界の違法労働や労働の安全性を確かめるために重要な役割を果たしている。
さらに、同グループは調達を国際水産物持続財団(ISSF)が実施する「持続可能な漁業に取り組む船舶登録」(ProActive Vessel Register )に登録している大型巾着網漁船からしか行わないと宣言している。ISSFが行う、環境保全対策に参加している企業の年次監査は、国際水域におけるマグロ漁の環境パフォーマンスやトレーサビリティの改善に貢献している。
MSC 認証に向けられる疑惑の目
過去数年にわたりグリーンピースの標的となっていたタイ・ユニオン・グループが労働問題に対策を講じることは大きな進歩だ。しかし、持続可能な調達指針の拠り所にしているMSC認証にも問題がないとは言えない。