「トリプルボトムライン」が非財務情報発信の中核

Interviewee
オーレ ムルスコウ ベック ノボ ノルディスク ファーマ社長
Interviewer
川村 雅彦・オルタナ総研所長、森 摂・オルタナ編集長

早くも2004年に「統合レポート」を導入し、グローバル企業の中でも最も先進的な統合レポーティングを実践する企業として知られるノボ ノルディスク。デンマークに本社を置く同社は、世界165カ国以上で糖尿病、血友病、成長ホルモン分泌不全など慢性疾患の医薬品を販売するメーカーだ。その非財務情報発信の中核になるのが、「環境・社会・経済」のトリプルボトムラインだ。
――ノボ ノルディスク社のCSRの基本戦略は何でしょうか。

ベック:当社は、CSR分野に長年携わってきました。すでに1993年から廃棄物の管理や工場におけるエネルギー分野などにおいて、環境負荷低減の取り組みを始めていました。それが進化した形が、いま私たちが『トリプルボトムライン』と呼ぶものです。

その背景を理解いただくためには、グローバル規模での半世紀の歴史を振り返りたいと思います。まず1960年代に急速な工業化が進む中で、職業安全衛生の徹底が求められました。1970代には、様々な環境問題が報道され、特に酸性雨が問題になりました。

1980年代には南アフリカのアパルトヘイトに反対する運動に多くの人が参加し、社会正義と経済成長の両立が世界的に叫ばれるようになりました。

グローバル化が進むに連れて、こうした環境や社会的な要因に対して企業は『自分たちには関係ない』とは、もう言えなくなったのです。どんな企業も、環境・社会の問題と何らかの関係性を持たざるを得なくなりました。

ノボ ノルディスク社としても、企業として、それを統合して取り組んでいくことを選択しました。それが『トリプルボトムライン』です。

当社の社員、マネージャー、リーダーは、ビジネス上の決定判断をする際に、財務・環境・そして社会の観点から判断し、それがどんな結果をもたらすかを考えなければならないのです。

――具体的にはどのような判断をされるのでしょうか。

ベック:まず、財務的な責任を果たすというのは、長期的な収益性をきちんと担保し、社会に貢献できるようにすることです。社会的責任については、社内でも社外でも人々が気持ちよく、豊かで健康な生活を送れるようにすることです。環境についての責任とは、私たちの周囲の自然に、望ましくない影響が及ばないようにすることです。

私たちはピーター・ドラッカー教授から、これらの責任は測定できなければダメだ、ということを学びました。責任に対して、真剣に取り組むのであれば、きちんと測定可能にして、そして、それを実現しなければならない。口で言っているだけでは、実現することはできません。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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キーワード: #CSR

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