「We are still in」: パリ協定離脱宣言に立ち向う米国

Sustainablebrands.comから翻訳・転載] 米国にトランプ政権が誕生して約半年が経過した。イスラム圏からの入国禁止をめぐる大統領令の混乱、オバマケア(健康保険制度)の廃止・代替法案プロセスのドタバタ劇、2016年の大統領選挙をめぐるロシア疑惑の拡大など、問題が山積みになっていく中、大統領は6月1日に温暖化対策の世界的枠組みであるパリ協定からの離脱を宣言した。まもなくその衝撃から1カ月が経とうとしている。(カリフォルニア州サクラメント:藤美保代)

現政権を象徴する混乱と脇の甘さはこの離脱決定においても例外ではなく、政権内、議会内、産業界、一般市民の間に、国外はもちろん、国内でも大きな波紋を広げている。離脱宣言後に行われた世論調査では、選挙民の59パーセントが離脱に反対という調査結果が出ている中で、鍵を握るグループはどのように動いたのだろうか。(カリフォルニア州サクラメント:藤美保代)

ホワイトハウス(政権)

パリ協定離脱推進の急先鋒は、大統領によりEPA(連邦環境庁)長官に任命されたスコット・プルイットと、大統領主席戦略官という肩書きを持つスティーブ・バノンとされている。プルイット氏はオクラホマ州の司法長官として、EPAの環境規制に反対し、EPAを相手取って何度も訴訟を起こしてきた人物。

バノン氏は超右派メディア「ブライトバート」の元CEOであり、国粋的・反国際主義的思想の持ち主。表舞台にはほとんど出てこないが、政権初期には大統領に対して絶大な影響力を持つと報じられていた。ともに環境規制などは「百害あって一利なし」と言わんばかりの強硬派である。

さらに、副大統領マイク・ペンスも、離脱後に「どういうわけか、この国でも世界でも、気候変動は左派たちにとってよほど大事な問題になっているらしい」と発言。温暖化そのものの重要性を否定してみせた。それでも、実は政権が全員離脱推進派というわけでは決してなかった。

離脱反対派だったと言われているのが、トランプの娘イヴァンカとその夫、ジャレッド・クシュナー(家族主義のトランプは、6月上旬の執筆時点では、まだこの2人を政権内で重用していた)。

彼らはニューヨーク育ちで、タカ派的・孤立主義的な政権内においてはややリベラル・グローバル志向の派閥を形成。イヴァンカはアップルCEOティム・クックなど財界の主役級に働きかけて、存続に向け父親を説得しようとしていた。また、元エクソン・モービルのCEOである国務長官レックス・ティラーソンも離脱反対派だったとされ、離脱宣言後も、「これで米国が温暖化対策を止めるわけではない」という旨の発言をしている。

さらに、国連大使であり、共和党の次期大統領候補とも目されるニッキ・ヘイリーは、離脱宣言後、「大統領は気候変動を信じていないのではないか」という質問に対し、「大統領は気候変動は起こっていると理解しているし、汚染物質(筆者注:温室効果ガスのこと)が変動に影響していると考えている」と発言し、政権に釘を刺している。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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