国際条約違反の象牙取引、日本のネットフリマで発覚

野生生物の取引監視ネットワークとして活動する国際NGOトラフィックのジャパンオフィスは、3年ぶりに「日本におけるインターネットでの象牙取引」を調査し、最新レポートを発表した。それによると、国内法が未整備のまま、大手フリーマーケットサイトなどで、ワシントン条約違反が疑われる象牙が個人間で売買されている。トラフィックは、日本政府に有効な規制の導入を、運営企業に自主的な象牙取引停止の検討を提言した。(オルタナ編集委員=瀬戸内千代)

象牙目的の密猟で数を減らしたアフリカゾウ

絶滅危惧種のゾウの密猟につながる象牙の国際取引は、ワシントン条約で1989年から原則禁止されている。しかし、それ以前に世界最大の象牙消費国だった日本では、象牙製品の生産高が当時の10分の1に減った今でも、個人蔵の中古品などが盛んに取引されている。

2017年5月から1カ月の調査期間中に、オークションサイトの「ヤフオク!(以下、ヤフオク)」で取引された象牙製品は計4520万円にのぼり、個人間フリーマーケットサイトの「メルカリ」では、タイやコンゴで購入したと書かれた象牙製アクセサリーが見つかった。

2018年から施行される改正「種の保存法(絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律)」で厳格になるのは事業者向けの制度で、個人間の取引や、全形象牙以外の加工された象牙製品の取引に関しては強制力がない。トラフィックは、ワシントン条約違反の取引が可能な「抜け穴が放置されている」と指摘した。

ヤフオクと楽天市場では、種の保存法に基づく届出事業者番号の掲示がある出店事業者の率が、2割程度から約9割へと大幅に上昇し、3年前に比べ法の順守は進んでいた。

とはいえ、現状の法の下では全形象牙を除く象牙製品の合法性を証明できない。トラフィックは、運営企業に対して、取引停止措置の検討や、利用者に野生生物取引の違法性を周知することなどを提言した。

「楽天市場」を運営する楽天は、いち早く対応し、7月6日に象牙製品の販売停止を決定。現在は人工象牙しか扱っていない。

トラフィックは、ワシントン条約の締結国である日本には、「自国の市場が密猟や違法取引に寄与しないことを確実にする責任がある」と述べている。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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