米政府、温暖化の人為的要因強調 大統領発言と対立

米政府は3日、「気候科学特別報告書」を発表した。同報告書では「温室効果ガスの排出など人間の活動によって引き起こされたのは間違いなく、ほかの説明には根拠がない」と地球温暖化の人為的要因が強調されており、「温暖化は経済的な思惑によるもので根拠がない」とするトランプ大統領の発言と矛盾している。ドイツ・ボンで6日から開催されるCOP23を前に、米国の動向が注目される。

「気候科学特別報告書」は海洋大気局(NOAA)や航空宇宙局(NASA)、米国エネルギー省など13の米政府機関の研究結果や観測データをまとめたもので、ホワイトハウスの承認によって4年に1度改定される。

同報告書によれば、1900年から昨年までの間に地球の平均気温は1度上昇しており、1900年以降、海面は世界平均で20センチ弱上昇している。米国内での高潮、山火事の増加、積雪が減ることによる西部での水不足など、温暖化に起因する被害は深刻化していると指摘された。

さらに「温室効果ガスの排出など人間の活動によって引き起こされたのは間違いなく、ほかの説明には根拠がない」と地球温暖化の人為的要因が強調された。2050年までに年平均気温が約1.4度上がると警告し、大規模なCO2の排出削減を進めれば温暖化を抑えられるとしている。

米国トランプ大統領は、選挙時に「地球温暖化の概念は中国が米製造業の競争力を奪うためにでっち上げた」などの発言をしている。「地球温暖化」に懐疑的な姿勢を示す大統領の足元から、真っ向から対立する科学的根拠に基づいた報告がされたことになる。報告書をまとめたメンバーが「政権には、報告書の内容を尊重してほしい」と話したというNHKの報道もある。

米国は6月、パリ協定の離脱を表明した。しかし実際に脱退が可能になるのは2020年11月であり、加えて、パリ協定の上位機構である気候変動枠組条約には引き続き参加をすると表明している。ドイツのボンで6日から開催される国連気候変動枠組条約第23回締約国会議(COP23)では、米国も今後のパリ協定のルール作りに参加する予定だ。米国の姿勢に注目が集まる。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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