みんな電力、ブロックチェーンで発電源を「見える化」

自然エネルギーを推進するみんな電力(東京・世田谷)は今秋、ブロックチェーン(分散型台帳)技術を使った電力取引プラットフォームを開始する。同社はこれまでも電気の生産者と消費者をつなぐ「顔の見える」仕組みを構築してきたが、ブロックチェーン技術を活用することで、ユーザーは電源を特定できるようになる。世界的に「発電源証明」の重要性が高まるなか、電源トラッキングの新たなシステムに注目が集まる。(オルタナ副編集長=吉田広子)

■使用した電気の追跡が可能に

電源の由来証明のイメージ

みんな電力の電源構成は自然エネルギーが約7割を占める。これは電力各社のなかで最も高い割合とされる。

2016年4月、電気の小売業への参入が全面自由化され、家庭や商店も含む全ての消費者が、電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになった。切り替え率は1割を超え、電気を「選ぶ」という意識は徐々に高まっている。

一方で、自然エネルギー由来の電気であっても、電力系統を通じて、ほかの電気に混ざって需要者に届けられるため、消費者は実感を得にくい現状があった。

みんな電力が開発中の電力取引プラットフォームでは、各発電所の発電量(30分値)をリアルタイムにトークン(デジタル証書)化し、ブロックチェーン技術で記録していく。これにより、各発電所の電力がどのユーザーに消費されたかが、個別にトレース(追跡)できるようになるのだ。

まさに電気に「色」が付くように、発電源を識別できるようになる。みんな電力が目指してきた「顔の見える電力」の発展形といえる。

■石炭火力発電でも非化石証書でCO2ゼロに?

2018年5月からはFIT(固定価格買取制度)電力由来の「非化石証書」の取引が始まる。これまでFIT電気は環境価値が認められないという問題を抱えていた。

FIT電気は、国民が賦課金を負担していることから、CO2排出量は火力発電や原子力発電を含めた電力全体の平均値で算定されていた。こうした状況に対し、非化石証書は、FIT電気から剥がされた環境価値を取り戻すことができるという利点がある。

一方で、低コストである石炭火力発電による電力に、非化石証書を組み合わせることで、「CO2排出量ゼロ」とすることが可能だ。これを「実質自然エネルギー100%」として、安価な自エネ電力として販売することも可能となる。

しかし、これでは石炭火力の電気を普及させることにつながってしまう。自然エネルギーの普及には単に証書を活用するだけでなく、電源が自エネ由来であることも必要なのだ。

欧州の発電源証明など、世界では自然エネルギーの比率を高めることが重要視されている。実際に気候変動問題に取り組む国際NGOであるCDPは、提言書のなかで「証書と組み合わせる電気についても、できるだけ再エネ電力(FIT電力)を調達すること」を求めている。

電源の由来証明を発行できるみんな電力の電力取引プラットフォームは、環境価値(CO2排出量ゼロ)と自然エネルギーの推進を同時実現するツールとして期待される。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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