ネスレが商品を通じた復興支援、宮古市で

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東日本大震災をきっかけに被災地で行われてきた企業によるさまざまな支援活動。震災からの時間の経過とともに、自社の強みや知見を生かしたものに形を変えながら継続しているものもある。チョコレートブランド「キットカット」を通じて、被災地の復興を支援する「キット、ずっとプロジェクト」を2012年から続けているネスレ日本の取り組みもそのひとつ。近年は主力事業のひとつであるコーヒーマシンを活用したコミュニティーづくりの支援などにも力を入れている。

文・釜石リージョナルコーディネーター(釜援隊)=手塚さや香

脳トレゲーム「ブレインHQ」の体験様子

9月9日、岩手県宮古市で地域の福祉の取組を発信する「みやこわくわく(和来輪来)まつり」が開催された。車椅子体験やカフェなどが用意された「ふくしCity」のコーナーではネスレ日本によるコーヒーマシンで健康飲料が提供されたほか、同社が開発する脳トレゲーム「ブレインHQ」の体験が行われ、別フロアでは子どもたちが楽しみながら食について学べる「健康卓球」コーナーがにぎわった。

同社は東日本大震災後、宮古市に本社を置く三陸鉄道の復興を支援した縁で同市とは2012年からつながりがある。岩手県沿岸部を走る三陸鉄道は津波で駅舎や線路が被災、12年に北リアス線の久慈~田野畑駅間が再開するにあたり、寄付金付き商品を販売しその売上の一部を三陸鉄道に寄付した。世界中からの応援メッセージや地元の中学生のメッセージを書いたサクラ模様のアートで駅舎や車体をラッピングするなど、同社製品のブランド力を生かした支援を展開してきた。

一方、震災の津波で被害を受けた宮古市は北海道についで広い岩手県で最大の面積を有し、広い市域に集落が点在、津波で被災した地域はもちろんのこと、山間部でも地域コミュニティの運営や高齢化といった課題が山積している。ネスレ日本は宮古市の課題を知り、地域コミュニティの課題解決のため山間部の川井地区を中心に地域住民のサロン活動の拠点にコーヒーマシンを導入しサポートする活動もスタートさせた。

■CSVとは事業を通じて社会問題を解決すること

「みやこわくわくまつり」では、仮設住宅から新居への移転が進み地域コミュニティの再生が課題となっている市中心部や沿岸部の住民や福祉関係者にもマシンについて知ってもらう機会をつくろう、と同市社会福祉協議会からの提案で出展が実現した。

健康卓球の体験様子

コーヒーマシン、脳トレ、健康卓球――。一見するとそれぞれが別の取り組みにも見えるが、同社の事業戦略であるCSV(共通価値の創造)と、「栄養・健康・ウェルネス」は密接に結びついており、食品メーカーとしての同社の知見が発揮されている。

コーヒーマシンのコミュニティ活動への導入は2013年に本社のある神戸市でスタートした。現在、神戸市と連携協定を結びマシンを取り入れた「介護予防カフェ」を市内76ヶ所で立ち上げ、高齢者の居場所づくり支援に取り組んでいる。マシンがあることで参加を呼びかけやすくなったり、参加者の会話が弾んだりする効果があるという。

さらにIoT(インターネットを通じたモノのネットワーク化)で人と人とのつながりを生む次世代型コーヒーマシンも開発。独居高齢者宅に設置することで、遠く離れた家族にマシンの動作状況が報告されマシンが高齢者の見守り機能を果たすという仕組みだ。会場ではスタッフがタブレットを使ってデモンストレーションをして使用方法を解説、年配の来場者も興味深そうに聞き入っていた。

スタッフがタブレットを使ってデモンストレーションをして使用方法を解説

脳トレは、脳の加齢を心配する高齢者自身や家族が契約しパソコンやタブレットでログインしてさまざまなゲームによって脳を鍛えるもので、会場では高齢者だけでなく家族連れが挑戦する姿も。また健康卓球も遊びながら栄養素を学べるとあって子どもたちや家族連れから好評だった。

■熊本地震被災地でも展開

近くに住む70代の女性は友人と来場し、マシンで抽出した宇治抹茶を楽しみ、「苦味もあって本格的な味。私たちでも操作できるなら趣味のサークル活動で使ってみたい」と語り、スタッフの説明に耳を傾けていた。

ネスレ日本ステークホルダーリレーション室の阿部純一室長は「高齢者の居場所づくりや子供の運動不足といった問題解決を通じた社会貢献を目指しています。例えばマシンがあることで人が集いコミュニケーションが生まれ、居場所の創造につながります。まずは地域の方々にマシンの存在を知ってもらいたい」と話す。また「熊本地震の被災地では仮設住宅でもマシンを導入され集会所などでの集まりに利用されています。宮古でもコミュニティの活性化に少しでも貢献できればと思います」と語った。

同市社協地域福祉課の佐々木睦子課長は「サロン活動にマシンが普及しコーヒーだけでなく健康飲料も出せるようになれば、参加者間で話題が広がり、新たな活動につながる可能性もあると思う」と期待する。

高齢化や人口減少が進み、地域コミュニティも担い手不足が深刻だ。そんな中でマシンやIoTを活用してコミュニティを活性化したり見守りを行ったり、という取り組みはますます注目を集めそうだ。

一般社団法人 RCF
2011年4月、震災復興のための調査を行う団体として発足。現在は復興事業の立案・関係者間の調整を担う「復興コーディネーター」集団として活動。代表理事は藤沢烈。活動例として、2015年度はいわて未来づくり機構を母体とする「いわて三陸 復興のかけ橋プロジェクト」を岩手県より受託し、岩手県内各地と県外企業・団体の復興支援マッチングを推進している。

2018年10月19日(金)20:41

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