「企業と社会の戦略的コミュニケーション」とは

学会「企業と社会フォーラム」(JFBS)は、2018年9月6~7日、「企業と社会の戦略的コミュニケーション」を統一テーマとする第8回年次大会を日本広報学会との共催のもと早稲田大学で開催しました。本大会には、日本のみならずイギリス、スウエーデン、タイ、台湾、中国、ドイツ、バングラディシュなどの7か国/地域から学界、産業界、労働界、NPO/NGOの各セクターに所属する研究者・専門家が約140人が参加し、議論・交流を行いました。

今回は、大会テーマの趣旨と併せて、キーノートスピーチおよびプレナリーセッションでの報告・議論内容をご紹介します。

■本大会テーマ「企業と社会の戦略的コミュニケーション」の趣旨

企業に限らず、NPO/NGOやそれ以外の組織もさまざまなステイクホルダーとのコミュニケーションを図る状況となっています。企業とステイクホルダー間のコミュニケーションは、パブリック・リレーションあるいはコーポレート・コミュニケーションという言葉で理解されていますが、近年は影響を与えるステイクホルダーごとにコミュニケーションを図るのが主流になりつつあります。

従業員とはエンプロイー・リレーションズ、消費者とのコミュニケーションはカスタマー・リレーションズ、取引先とはサプライヤー・リレーションズ、投資家や調査機関とのコミュニケーションはインベスター・リレーションズ、地域社会とのコミュニティ・リレーションズ、報道機関とのメディア・リレーションズといった点から理解がなされています。

たとえば投資家とのコミュニケーションでは、ESG投資市場の拡大に伴い企業はこれまで以上に投資家を意識せざるを得なくなっています。ESGのデータ分析や評価を行う調査機関も従来のアンケート調査から、企業が開示している情報を調査機関側でチェックするスタイルに移行しており、企業側の情報発信の設計がますます重要になっています。

2016年にはGRIから新しいレポーティング基準として、「GRIスタンダード」が発表されました。企業は2018年からこの基準に沿って情報開示を行う必要性に迫られるようになっています。社会的課題への関わりなどをサステナビリティレポートや統合報告書にまとめて企業HPで発信するのが一般的なコミュニケーションですが、最近は、消費者やコミュニティに向けて、小冊子や動画やSNSなどを通じてコミュニケーションを取ることや、従業員向けに自社の取り組みの目的や進捗などを定期配信するなどのコミュニケーションがなされるようになっています。

本大会は、企業やNPO/NGOなどの組織が社会との関係性を構築・維持するためのコミュニケーション活動について実務的・理論的に議論することを目的として開催されました。

■キーノートスピーチ

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齊藤 紀子(企業と社会フォーラム事務局)

原子力分野の国際基準等策定機関、外資系教育機関などを経て、ソーシャル・ビジネスやCSR 活動の支援・普及啓発業務に従事したのち、現職。一橋大学大学院社会学研究科修士課程修了、千葉商科大学人間社会学部准教授。

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