森に至るまでの道。(後編)

岩崎 唱
ライター、元森林関係のNPO 事務局長
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長野県植栽地現状レポートの後編。2018年12月の視察では長和町和田峠スキー場跡地の植栽地の現状でしたが、今回は東御市田之尻地区の山火事被害林と佐久市大沢財産区のヒノキ経済林のレポートです。

すっかり整備され、植樹を待つばかりの山火事被害林(2011年5月 長野県東御市北御牧地区・田之尻

その2 山火事被害林をどんぐりの森にする活動

和田峠スキー場跡地から向かったのは東御市の北御牧地区・田之尻。田園地帯だが、千曲川の支流の一つ、鹿曲(かくま)川がつくった河岸段丘の斜面は森林となっている。

2010年5月に地域の人たちが荒廃した人工林の整備を始めようとしていた森から出火し、約4haの山林を焼失。この森の再造林をするにあたり、地域の人たちはスギやヒノキを植えるのではなく、ドングリがなるコナラやクヌギ、花が咲くヤマボウシやヤマザクラ、紅葉がきれいなイロハモミジなど広葉樹を植えて、子どもたちや大人が自然を楽しみ、憩うことができる森にしようと考えた。

NPO法人 森のライフスタイル研究所もこの計画に賛同し、いくつかの企業からの助成を仰ぎ、「どんぐりの森 里山再生プロジェクト」と名付けボランティアによる森づくり活動を2011年5月から2015年9月まで実施した。植樹を行ったのは2011年から2013年までの3年間で、一般と企業からのボランティア、地域の住民の手によって広葉樹約1万2千本を植えた。下草刈りは植林直後の2011年8月から活動終了の2015年9月まで。それ以降は、地域の人たちが手入れをしている。

すっかり整備され、植樹を待つばかりの山火事被害林(2011年5月 長野県東御市北御牧地区・田之尻)

7年後の植栽地、雑木林に近づいている?(2018年12月 長野県東御市北御牧地区・田之尻)

ツル性の植物と闘いながら里山林へ

植栽地は、日当たりのよい斜面のため、概ね生育がよく鬱蒼とした藪になっていて驚かされた。林内の遊歩道は、住民が草刈りをしてくれているようで、歩きやすかった。歩道沿いに植えたヤマザクラはかなり大きくなっていたので春に来れば花見ができそうだ。

しかし、クズやフジなどのツル性の植物の繁茂が旺盛で、植樹した木に巻き付いたり、覆いかぶさったりしていて見た目はあまりよくなかった。目標としていた公園的な森にするには、ツル切りなどの手入れをした方がいいだろう。植えた木は、すでに雑草類の高さを超すまでに生育しているので、いずれ木々が樹冠を欝閉すれば林床に光が届かなくなり下層植物が生育しにくい環境になるだろう。それまでコナラやヤマザクラたちにがんばってもらうしかない。

ところで、どんぐりの森で珍しいものを見つけた。野生の蚕、「天蚕」の繭だ。きれいな緑色をしていて何かの実に見える。この繭からは緑色の絹糸がとれるのだという。単一樹種の森ではないので、ここで暮らす生物も多様性に富んでいるのかもしれない。田之尻の植栽地は、理想とは少し異なるが、まあ元気に生育しているのでよしとすべきだろう。

遊歩道沿いのコナラ(2018年12月 長野県東御市北御牧地区・田之尻)

天蚕の繭(2018年12月 長野県東御市北御牧地区・田之尻)

 その3 荒廃した人工林にヒノキ経済林につくりかえる活動

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岩崎 唱
ライター、元森林関係のNPO 事務局長
フリーランスのコピーライター。「緑の雇用担い手対策事業」の広報宣伝活動に携わり、広報誌Midori Pressを編集。全国の林業地を巡り、森で働く人を取材するうちに森林や林業に関心を抱き、2009年よりNPO法人 森のライフスタイル研究所の活動に2018年3月まで参画。森づくりツアーやツリークライミング体験会等の企画運営を担当。森林、林業と都会に住む若者の窓口づくりを行ってきた。TCJベーシッククライマー。

2019年1月25日(金)10:46

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