「気持ちのよい音とは?」(三浦 光仁)

私たちは音についてあまりにも関心が無さ過ぎたのかも知れません。

音はどこにでもあります。空気や食べ物のように生活の一部です。体に入って来るものについては、例えば食べ物にはすごく関心を払うのに、同じように体に入って来る「音」についてはあまり気にしていないかも知れません。

体に入って来るものとして考えれば音はとても大切なのですが、おそらくもっとも蔑ろにされていると思います。

人工甘味料、添加物など一切無し、と謳うことが重要視されていますが、人工直接音、添加音など一切無しという音は聞きません。

それでもヒトは「自然な音」を求めているはずです。

「気持ちのよい音」といったときみなさんはどんな音を思い浮かべますか?

小川のせせらぎ、風にそよぐ葉音、砂浜に寄せては返す波の音。

気持ちのよい音とは自然の音ではありませんか。

人が作り出す音の中で、気持ちのよい音はありますか?

もちろん素晴らしいヴァイオリンの演奏や、うっとりするようなテノールの声。

確かに気持ちのよい音ですが、それはあくまでも「生」の場合で、再生音となった瞬間に、気持ちのよい音という感覚は消え去ってしまうのではないでしょうか。気持ちのよい音とは、自然な響き方、自然な聞こえ方のする音と言い換えることができるかも知れません。

指向性の強い直接音は刺激音であり、聴覚を緊張させます。

指向性のない、空間に広がる、宇宙に向かって均等に満ち渡る自然な音こそ気持ちのよい音と言えるかもしれません。

ほとんどの動物は地上で生きていることで(水中+空中でもほぼ同様)体内に重力を感じる「平衡覚器」というセンサーを備えているそうです。

地球の重力を感じ、どの方向が地球に近いのか、いま自分はどのような位置にいるのか知るために、感覚センサーとしては生物史的に最も古いのが「平衡覚器」だそうです。

ヒトはその「平衡覚器」の中に「聴覚」を発達させました。

一番原始的なセンサーの中に「聴覚」が出来たせいでしょうか、ヒトは哺乳類のなかでも「聴覚動物」と呼ばれています。

聴覚が生きるか死ぬか、生命を判断するもっとも重要なセンサーとして機能するためにそのように呼ばれています。

生まれてから死ぬまでヒトの一生で1秒たりとも聴覚が休むことはありません。

眠っている間は最も情報量の多い視覚を閉じてしまいますし、嗅覚も触覚も一旦感覚を得るとすぐにキャンセルできるようになっています。

同じ匂いをいつまでも感じることはなく、衣服を着て肌に感じる感触を常に保つことはありません。味覚は言わずもがな、です。

しかし、聴覚は寝ている間も、どんな時も、生まれる前の胎児の時も稼働しています。

この生命を委ねている聴覚に対して、日常的にどんな音を与えるか。

毎秒毎分毎時毎日、継続的に与える音について少しだけでも考えてみるのは如何でしょう。

そしてあなたの大切な人にもそれは同じように毎日起こっていることです。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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