「教育現場から気候変動対策を」先生・学生らが訴え

みんな電力(東京・世田谷)は12月2日、シンポジウム「今こそ教育現場から気候変動対策を!――RE Action For Teachers」を衆議院第一議員会館で開催した。国立環境研究所地球環境研究センターの江守正多副センター長、新渡戸文化学園の山藤旅聞教諭による基調講演が行われたほか、パネルディスカッションでは「次世代に対し、本気で気候変動対策に取り組む大人の姿を見せられていない」といった問題提起がされた。(オルタナ副編集長=吉田広子)

■「化石燃料文明」を卒業へ

気候変動対策を行った場合(下)と行わなかった場合の温度変化を説明する地球環境研究センターの江守副センター長

気候危機が深刻化するなか、発電時にCO2を排出しない再生可能エネルギーは、気候変動対策の重要な施策として位置付けられている。SDGs(持続可能な開発目標)の目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」でも、再生可能エネルギーの割合を大幅に増やすことが目標に掲げられている。

「顔の見える」電力を推進するみんな電力の大石英司代表は、冒頭の挨拶で「コンセントの先に何があるのか。電気はどこから来るのか。払った電気料金はどこに行くのか。ぜひ一度考えてみてほしい」と呼びかけた。

原田義昭・前環境大臣は、グレタ・トゥンベリさんの言葉を引用しながら、「今こそ気候変動対策をしなければならない。今回のシンポジウムが目指すように、先生が率先して環境教育に取り組み、生徒に教えることが地球を守ることにつながる」と強調した。

地球環境研究センターの江守副センター長は基調講演「気候変動を巡る世界の動向」のなかで、「このままいけば2040年前後に1.5℃上昇、2050年前後には3-4℃程度上昇する」と危機感を示した。

気温が上昇するほど、「海面上昇」「洪水」「台風」「熱波」「食料不足」「水不足」「海の生態系の損失」「陸の生態系の損失」といったリスクが高まる。

江守副センター長は「パリ協定で目指している1.5℃未満に抑えるためには、2050年前後にCO2排出量をゼロにする必要がある。『脱炭素化』はイヤイヤ努力して達成できる目標ではない。社会の『大転換』が起きる必要がある」とした。

「石器時代はなぜ終わったか。石が無くなったからではなく、土器や金属などより良い代替手段が見つかったから。人類はまさに今世紀中に『化石燃料文明』を卒業し、CO2を排出しない再生可能エネルギーに変わろうとしている。石器時代と同じ転換がいま起きようとしている」(江守副センター長)

■「大人が答えを教えられない」

新渡戸文化学園の山藤教諭は、「持続可能な社会にするための答えを大人が教えることができない。だからこそ、大人の持っている経験とステークホルダーとの関係性を生かして、子どもたちと一緒に未来をつくろうという姿勢が重要だ」と話す。

同校はSDGs(持続可能な開発目標)の推進に力を入れている。同校の中学1年生3人は、誰でも取って食べて良い果樹を道に植える「ポリネーションストリート」の企画、FSC(森林認証協議会)認証紙の拡大、電力に関するプロジェクトなど、それぞれの取り組みを発表した。

生徒が自ら学ぶ姿勢を育てる山藤教諭は「実はエネルギー問題については、生徒から教えてもらった。目標7は一番遠い問題だと思っていたが、身近な問題だと知ることができた」と語った。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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