しかし、近年ではESG(環境・社会・ガバナンス)投資に象徴されるように、企業の社会対応力が、非財務情報として投資のモノサシに組み込まれるようになった。社会ニーズと明らかに剥離する企業の施策は、投資対象として見直されるリスクをはらむ。
例えばアサヒビールが2004年、ペットボトル入りビールの発売を発表したところ、複数の環境保護団体から「PETのリサイクルシステムに多大な影響を及ぼす可能性がある」と指摘され、発売を中止したこともある。
消費者基本法の趣旨に明らかに抵触
顧客対応についても、顧客の求めに応じるだけではなく、「顧客を啓発する」企業行動も求められている。2004年に改正された消費者基本法では、消費者の8つの権利とともに、事業主が果たすべき5つの責務が明示されている(CSR検定3級公式テキスト2章5「消費者重視経営とは何か」)。
すなわち①安全と取引の公正を確保すること②必要な情報を提供すること③取引の際に消費者の知識や経験、財産状況などに配慮すること④苦情を適切かつ迅速に処理する体制の整備と適切な処理⑤国や自治体の消費者政策に協力することーーの5点だ。
明治の今回の施策は明らかに②と⑤に反している。今回、消費者に提供すべきだった必要な情報とは「アイスクリームは-18℃で管理すれば風味や色の変質がほぼ生じないこと」。むしろ、適切な温度管理を徹底すべき旨を伝えるべきだった。
⑤国や自治体の消費者政策に協力することーーについては、消費者庁の「「食べもののムダをなくそうプロジェクト」、農水省の「ノー・フードロス・プロジェクト」、環境省の「食べ物を捨てない社会へ」などの取り組みに、明らかに反している。
明治の今回の施策は苦渋の判断だったと想像されるが、上述した通り、明らかに時代の流れに反している。もう一点、重要なのは、間違った判断をした場合でも、修正する時間も十分にあることだ。それこそが真の「社会対応力」であり、対応できれば同社の社会的評価は高まることは間違いない。