ブルーエコノミーの恵みと闇との付き合い方

企業のESG情報の収集、基準づくり、企業と投資家対話に過去13年間関わってきた岸上有沙氏によるコラム第6弾。

2019年1月20日、Responsible Investorとクレディ・スイス社が協力して実施した、ブルー・エコノミーのリスクと機会に関する投資家の意識調査とそれを取り巻く実態の報告書が開示された(以下IBE)。

既に当レポートで効果的に情報がまとめられているため、今回はその内容を最大限活用しつつ、そこから更に厳選して海洋の光と影と投資行動に焦点を当てている。

世界の海洋資産は、GDP比で世界7番目の経済大国に匹敵する24兆米国ドルの価値があると概算されている。約2.5兆米国ドルの直接的な経済効果をもたらし、直接・間接的なものを合わせると世界の10~12%の雇用に関連しているとされている。(IBE p5)

魚介類の消費額は2016年時点で3,620億米国ドル相当に匹敵し、これは次ぐ鶏肉の1,820億米国ドルを大きく上回るものであり、その消費量は鶏肉の30%増、牛肉の2倍と概算されている。

海洋から受けている恩恵はそれだけではない。地球規模での対策が急務とされている気候変動だが、現時点では人為的な活動によって増加している二酸化炭素による温室効果の93%を海が吸収してくれている。

特に塩性湿地に存在するマングローブの森においては、陸上の森に比べて4倍の二酸化炭素を貯蔵する機能があり、かつ40倍の速度で吸収可能だと言う。(IBE p33)

これだけ見れば、夏休みの海水浴や花火大会を楽しむ場としてだけではなく、海とそれを取り巻く活動が、私たちの地球環境、経済活動、雇用、食生活など、日々意識している以上に多大なる貢献をしていることが伝わるだろう。

しかし、これらの経済効果と地球環境への貢献は、「健全なる海洋資源の扱い」が行われることが大前提としてある。

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kishigami

岸上 有沙

2019年4月よりEn-CycleS (Engagement Cycle for Sustainability)という自らのイニシアチブの元、各種講演のほか、Responsible Investor でのコラム執筆、J-SIF運営委員、AIGCCワーキンググループ等を通じて、ESG投資やサステナビリティに関連した企業・投資家行動とグローバル発信の促進に携わる。2007年よりESGとサステナブル投資に従事し、ロンドンでの勤務を経て2015年より東京に異動。FTSE Russellのアジア環太平洋地域のESG責任者として、企業との対話(エンゲージメント)、ESGインデックスやレーティングの開発と管理、及び機関投資家のスチュワードシップ活動の実行に関するサポートを務めた。慶応義塾大学 総合政策学部卒、オックスフォード大学にてアフリカ学の修士号取得。執筆記事一覧

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