日本企業の強制労働リスク評価、ソニーだけが高得点

トップに立ったのは、ヒューレット・パッカード・エンタープライズで、スコアは70点でした。続くのが、HPおよびサムスン(69点、以下単位同)、インテルおよびアップル(68)、デル(63)、マイクロソフト(59)となっています。

スコアが低かった項目は、労働者の結社の自由と斡旋料の負担の禁止で、団結権や団体交渉権といった権利の保障については、49社すべてのスコアが0点となりました。債務労働につながる斡旋料への対応は進んでおり、36社(73%)がサプライヤーに対して労働者の斡旋料の負担を禁止する方針を掲げ、2018年の前回調査から対応企業数は60%増加しています。

しかし、労働者への斡旋料の払い戻しについて公表している企業は、13社(27%)のみで、そもそも斡旋料の支払いを防ぐための包括的な措置を取っている企業はいませんでした。

■日本企業の評価結果

サプライチェーンの工場で働く労働者(イメージ)

日本企業は、ソニー(36点、以下単位同)、日立製作所(27)、任天堂(23)、村田製作所(18)、東京エレクトロン(16)、キヤノン(14)、パナソニック(13)、HOYA(13点)、京セラ(10)、キーエンス(6)という結果となりました。

日本企業10社のうち、全体平均を上回ったのは、ソニーのみとなりました。日本企業の平均スコアは18点と全体平均を大きく下回り、アジア勢の中国(3社)、韓国(2社)、台湾(3社)の平均と比較しても、韓国の41点、台湾の21点を下回っています。

日本企業は、方針や体制に関する項目のスコアは高いのですが、その他の項目についてはのきなみ低いという結果となりました。10社とも強制労働への対応の意思を示し、サプライヤー規範にも含めていますが、結社の自由や団体交渉権を保障する具体的な取り組みをしている企業は1社もありませんでした。

また、7社がサプライチェーンの労働者が苦情を申し立てるための苦情処理メカニズムを導入、または、サプライヤーに対応を要求していますが、サプライヤーの労働者が実際に申し立てをしていることを示した企業はいませんでした。

日本政府によるビジネスと人権に関する国別行動計画の策定が進む中、日本企業でも各社が方針に掲げている内容をどのように実践するかが課題となっています。

KnowTheChainは、人権や平和構築に携わる民間財団のHumanity United、ビジネスと人権分野の情報発信や調査を行う国際NGOであるBusiness & Human Rights Resource Centre、 ESG調査・評価会社のSustainalytics、労働分野の国際NGOであるVeritéのパートナーシップにより活動しています。

ベンチマークでは、国連ビジネスと人権に関する指導原則に基づき、各社の方針やデュー・ディリジェンス、救済措置などを評価しており、7つのテーマからなる評価指標は、日本語・英語・中国語で公開しています。ICT部門の他に、食品・飲料部門、アパレル・フットウェア部門の評価を行っており、結果は順次発表予定です。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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