■引きこもりに社会の「入り口」を
社会課題解決の担い手であるNPOは、目の前の問題や困った人たちを助けることで手一杯になり、マネジメントに手が回らないことも多い。そこで、トヨタ財団は2016年に「トヨタNPOカレッジ『カイケツ』」を開始。助成金を拠出するだけでなく、問題解決力を身に付けてもらうことを目的にしている。
古谷講師のほか、元トヨタ自動車でのぞみ経営研究所の中野昭男所長、日野自動車TQM推進室の鈴木直人主査が講師を務めている。
カイケツに参加するNPO法人コネクトスポット(愛知県岡崎市)は、「年齢や障がいにかかわらず、誰もがその人らしく共に生きる地域の実現」を目指し、障がい福祉サービスを提供している。
作業療法士でもある山下祐司理事長は、精神科病院で働くなかで、「社会全体が生きづらくなっているのではないか」と感じたという。そこで2018年4月、コネクトスポットを設立。取り残されている人たちが地域の担い手として自己実現できる社会づくりに取り組んできた。
山下理事長は「設立から2年が経ち、人材育成や経営の課題を感じるようになった。思いを持つ仲間で何とかやってきたが、組織基盤を安定させ、次のステージに進むためにカイケツへの参加を決めた」と話す。
最近は引きこもりの相談も多く、家と社会の「入口」になるような居場所づくりにも注力する。「学校や職場以外にも、社会にもっと居場所があっていい。誰も取り残されることのないまちづくりを進めていきたい」と力を込めた。
■ 北海道の読書環境を整備したい
北海道で読書環境の整備を進めるのは北海道ブックシェアリング(江別市)だ。学校図書館の蔵書率や公共図書館の設置率が低く、読書環境ワーストレベルの北海道で、「だれもが豊かな読書機会を享受できる北海道にしよう」と、2008年に設立された。
荒井宏明代表理事は、「道内の図書室には『コンピューター』という言葉もない古い百科事典が並んでいる。読書経験の少ない子どもたちは、体系的に学ぶという基礎的な力が乏しく、ITなども使えない場合が多い」と危機感を募らせる。新型コロナウイルスの影響で書店の閉店も相次ぎ、読書環境はさらに厳しくなった。
荒井代表理事は「広い北海道で読書環境を整備するために機動力をアップさせたい」との思いからカイケツに参加。読書機会の不平等を解消し、時代にあった蔵書にするために、各地で図書の専門家の掘り起こしなどに力を入れていく。
カイケツは全6回のワークショップ形式の講座で、次回は7月16日に開かれる。2021年1月に開催予定の報告会で、問題解決の成果を発表する。