合鴨農法でカモとコメの「二毛作」

【写真】カモ独特の風味がスパイスで引き立つ「アイガモのパストラミ」

田んぼでカモに除草を助けてもらう「合鴨農法」が日本で広がりつつあるが、成長した鴨をハムとして販売する動きが出てきた。フランス料理でもよく使われる鴨肉は鶏肉にはない風味があり、合鴨農家の間では「カモとコメの『二毛作』で収益をあげていきたい」と期待が高まっている。

このほど、椎名人工孵化場(千葉県横芝光町)と吉田ハム工場(静岡県吉田町)が提携し、カモの出荷が始まる。最初の1―2年は、親ガモをハムに加工して、流通ルートを確立する。その後、合鴨農法で育ったカモも農家から買い上げて、このルートに乗せる計画だ。

合鴨農法では、主にカモのひなを使う。大きくなると稲を食べてしまったり、田んぼを踏み荒らしてしまうからだ。そこで農家は毎年、成鳥になったカモを処分しなければならないわけだ。

しかし、地域内で消費できるカモの量は限られており、それが合鴨農家が作付面積を増やせない原因にもなっていた。食べ切れないカモの飼育を放棄した農家が、川や沼に大量のカモを捨て、近隣に迷惑をかける例もあった。
 
そこで、同孵化場では「年間7000羽も処分される親ガモの命を全うさせたい」と、吉田ハム工場と手を組み、鴨肉ハムの開発を始めた。今後、消費者の反応を見ながら販路を広げていく。

親ガモによる鴨肉ハムの加工・流通ルートを確立し、その後、2年後をめどに、合鴨農家のカモを回収し加工する事業に着手する。

同孵化場は、指定の食鳥処理場にカモを持ち込んだ農家に、1羽あたり100~200円を支払うシステムの構築を目指している。農家にとっては、毎年1000羽の持ち込みで10万~20万円程度の収入が見込める。

同孵化場の椎名秀治社長は、「合鴨農法の作付け増には、カモの出口確保が大きな課題。取り組む価値がある」と意気込みを語る。

このほど同事業は、国が推進する「農商工等連携事業計画」に認定された。販路開拓を含め、行政による各種支援が受けられる。計画では今後5年で、椎名人工孵化場は3600万円、吉田ハム工場は8208万円の売上増を見込んでいる。(オルタナ編集部=瀬戸内千代)2010年11月22日

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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