温暖化対策に産業界「影響を示せ」

自動車、電機、鉄鋼など九つの業界団体が11月24日、東京都内で共同会見を開き、地球温暖化対策についての提言を発表した。2012年で期限が切れる京都議定書の延長について「米国・中国など主要排出国が対象となっていない実効性の乏しい枠組みで、延長は反対」と訴えた。また現在の民主党政権が成立を目指す「地球温暖化対策法案」(温基法)について、削減数値目標を設定していることを批判した。

地球温暖化問題を議論する「気候変動枠組み条約第16回締約国会議(COP16)」が29日からメキシコで開かれるのを前に石油連盟、セメント協会、電気事業連合会、電子情報技術産業協会、日本化学工業協会、日本ガス協会、日本自動車工業会、日本製紙連合会、日本鉄鋼連盟の9団体が意見を示した。

会見で鉄鋼連盟の代表は、京都議定書は日本の産業界に負担を押し付けるため「間違った電車に乗ってはいけない」と主張。9団体は提言で日本などが議定書で削減義務を負うのに、産業活動のライバルである中国やインドが義務を負わないため、生産移転が加速しなけないと指摘した。

また提言では温基法案に盛り込まれた「温室効果ガスの排出量を2020年に1990年比25%削減」との目標について、「経済や国民生活・雇用にどんな影響を与えるか、早急に政府としての統一見解を示すべきだ」と注文した。

日本の産業界は世界トップクラスのエネルギー効率を持ち、生産当たりのCO2の排出量も少ない。そうした強みを1997年に成立した京都議定書に反映できなかったとの不満が根強い。

ある経済団体の幹部は取材に「時代の流れを読んだ。これまで世論を恐れて強く主張できなかった」と説明する。国内では、菅直人首相が10月に京都議定書の単純延長に反対することを表明。また現時点で支持率低下に悩む菅政権には、温基法案の成立への熱意はそれほどうかがえない。

国際交渉でも、すべての国に公平な削減を求めるアメリカと、CO2削減の義務化を拒否する中国や途上国らとの対立がある。そのため、京都議定書の義務が終わる2013年以降の枠組みを決める昨年開催のCOP15で合意文書がまとまらなかった。「日本の政治・外交力で国際的枠組みを作ることは難しいだろうが、最低でも損をしないように主張してほしい」とこの幹部は述べた。

しかし京都議定書の枠組みを壊しても、新しい枠組みはまだ見えない。9団体の会見でも、「産業界のエネルギー効率は素晴らしい」「温暖化対策に業界は努力している」という自賛はあっても、新たな国際制度への構想と一段の負担の引き受けの言及はなかった。(オルタナ編集部=石井孝明)11月26日

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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