COP16で日本に「化石賞」

地球温暖化対策について話し合うため、メキシコのカンクンで開かれているCOP16(国連気候変動枠組条約第16回締約国会議)で11月30日、世界各地の環境保護団体で作る「気候行動ネットワーク(CAN)」が、交渉で最も後ろ向きの発言をした国に与える不名誉な賞である「化石賞」に日本を選んだ。前日の会合で「京都議定書の母国が破壊的な発言を行い、会議の雰囲気を悪くした」というのが受賞理由だ。

京都議定書は、主要排出国の米国を除く先進国に、2008年から12年までの間に温暖化ガスの排出量を1990年比で5%引き下げることを求めるのが特徴だが、削減義務の対象に中国やインドなどの新興国は含まれない。COP16では、2012年で期限切れを迎える京都議定書に代わる、2013年以降の新たな温暖化対策の国際的な枠組み作りに向けて話し合いが行われている。

今回の会合で、EUは削減義務の空白期間が生じるのを避け、また先進国の削減義務を明確にするために京都議定書の延長を求めており、削減義務を回避したい新興国や途上国がこれに同調する動きを見せている。これに対して日本は、京都議定書の削減義務国の排出量は全世界の27%に過ぎず、2国で41%を排出する中国と米国が参加する新たな枠組みが必要だとして、延長に強く反対している。

29日の会合で、日本政府代表団は自国の立場を明確に示すべく「京都議定書の削減義務の延長はいかなる条件でも受け入れられない」と発言したところ、会場は静まり返ったという。新たな国際ルールを目指す「コペンハーゲン合意」が不調に終わった昨年のCOP15の二の舞を避けるべく、議論を立て直そうとしていた会場の雰囲気に日本が冷や水を浴びせた格好だ。

この発言をCANは問題視した。化石賞には「化石燃料」と「化石のように古い考え方」という2つの意味が含まれており、COP期間中は交渉に後ろ向きの発言をした国を毎日選出し、その日の賞を発表している。30日に化石賞を受賞したのは日本だけだった。

今回の受賞について、NPO気候ネットワークの浅岡美恵代表は「日本が、アメリカや中国が参加する新たな条約の取り決めを主張するにしても、COP16の冒頭で京都議定書の延長を拒絶するというのは話が別だ。このままでは日本が孤立しかねない。日本が国際社会から理解され、信頼されるためには柔軟性をもって交渉に臨むべきだ」と話している。(オルタナ編集部=斉藤円華)2010年12月2日

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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