エコと家具が融合 Hミラー直営店

【写真1】ハーマンミラーの直営店(東京・丸の内)

家具メーカーのハーマンミラージャパンは12月11日、同グループで世界初となる直営店を東京・丸の内にオープンする(写真1)。同社は著名デザイナーや芸術家との協力で革新的なデザインの家具を提供することで知られるが、環境コンセプト「C2C」の実践を行うエコ企業でもある。展示された家具にはエコへの工夫が込められていた。

「われわれは環境のよき番人でなければならない」。店内には同社の元CEOのマックス・デプリーの言葉が掲げられていた。店は木が多く使われた温かく開放的な空間で外から人が入りやすい。そして家具を体感できる。柱には彫刻家イサム・ノグチ、デザイナーのチャールズ・イームズなど、同社が協力した現代芸術の巨匠たちのポートレートと言葉が飾られている。

開店の目的は日本市場の開拓だ。同社マーケティング部の前澤恵子さんは、「働き方や、生活を提案する場にしたい」と話す。日本独自の取り組みとして、写真家熊谷隆志氏や、画家MUSTONE(マストワン)とのコラボを行う。さらにデザインなどのセミナーも開催する。

【写真2】店内に置かれたイームズシェルチェア

同社の製品は私たちの生活にも影響を与えてきた。「イームズシェルチェア」(写真2)は1948年にニューヨーク近代美術館が開催した「ローコスト家具デザインコンペ」で注目され50年に製品化。シンプルで機能的な美しさを持つデザインで知られる。これに似た家具をどこかで見かけた人も多いだろう。

そして、このいすは昔のままではない。発売時には当時の最新素材だった特殊プラスチックを使ったが、今では環境に配慮して再利用可能な樹脂のポリプロピレンで作られている。色や足の形、素材で改良が続く。

このように製品作りで同社は環境配慮を進化させている。その特徴の一つが生産活動でのC2Cの配慮だ。C2Cとは「ゆりかごからゆりかごへ(Cradle To Cradle)」を意味し、物を捨てず、循環を繰り返させるように生産時点から配慮する、製造業などで取り入れられ始めた環境コンセプトだ。化粧品のアヴェダなど、欧米の先進的なメーカーで採用されている。

同社は2003年に初めてC2Cのコンセプトに基づく製品「ミラチェア」を発売。部品の96%がリサイクル可能だ。そして座り心地も快適で、今も売れ続ける。本社(米ミシガン州)では「環境のためのデザインチーム」が製品の環境基準を決定している。製品の原材料に環境負荷に応じて4段階のランク付けを行い、それがゼロまたは極めて少ないとされる原材料だけを使う製品作りを目指す。

「デザインとは問題を解決するためにある」。これは同社のモットーだ。家具とそれが作るライフスタイルが、エコ配慮や快適さの追求と両立しながら、環境問題解決のために新しいアプローチを示せるかもしれない。そんな可能性を感じられる空間だ。(オルタナ編集部=石井孝明)12月8日

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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