節電照明 半分の電力で同じ明るさ

生鮮食品の色を損なわないLED照明も登場(ラックランド「棚子ちゃん」シリーズ)

「3・11」の震災以降、首都圏では節電が切実な課題になっている。危険を伴う突然の停電を回避するため、東京電力は3月14日から計画停電を実施した。政府は夏季に予想される電力不足に向けて方策を練っており、各省庁もホームページに具体的な節電方法を掲載して一層の協力を呼び掛けている。

都心で目に付くのは、無駄な照明を消す節電行動だ。オフィスビルでは、照明による消費電力量が全体の約21%を占める(『エネルギー白書2010』より)。消灯せずに節電したい場合は、反射器具やLED電球の活用が有効だ。

例えば、テックリンク(東京都大田区)の「ECOミラー」は、特殊なPET樹脂製の板で光を効率よく反射し、照明器具の照度を約1.6倍にする。蛍光灯を間引いて同製品を導入した企業では、明るさを保ったまま、照明による消費電力量を50%削減できた。

LED(発光ダイオード)電球は、同じ明るさの白熱電球の約1割しか電力を使わない。発売当初は1球1万円もしたが、現在は定価でも2500円程度。ランニングコストが安く、10年以上交換不要なので、100円の白熱電球を買い替え続ける場合と比べると、約1年経過後は年々得になる(アイリスオーヤマ調べ)。

LED電球「ECOLUX(エコルクス)」を販売するアイリスオーヤマ(宮城県仙台市)は、4月1日から「エコルクス節電キャンペーン」をスタートした。同社も工場などが被災したが、9月末までの半年間、エコルクスの出荷1球当たり50円を義援金として被災地に寄付する。

ラックランド(東京都新宿区)は、陳列棚に並ぶ野菜や果物、精肉の色を引き立てる30種類のLED照明を1年半かけて開発し、3月31日に「棚子(たなこ)ちゃん」シリーズとして発売した。生鮮食品がおいしそうに見えないという理由でLED照明の採用をあきらめていたスーパーなどに、納入を急ぐ。先行導入した店舗では、棚下照明の消費電力量を53%削減できた。

3月30日にウェブサイト「緊急節電」を立ち上げた東京大学エネルギー工学連携研究センターの岩船由美子准教授は「夏はピーク電力の削減が必須。それに向けて今から取り組むことが重要だ。まずは無理のない範囲での対策から積極的に実施を」と強調する。

首都圏が頼ってきた原子力発電の安全神話が崩れた今、急場をしのぐ一時的な節電にとどまらず、長期的な視野に立った本気の省エネが求められている。簡単で、しかも確実に節電ができる照明の転換は、その第一歩になりそうだ。(オルタナ編集部=瀬戸内千代)2011年4月4日

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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