復興基本法に人間復興の理念を 日弁連

6月7日、復興基本法案(正式名称:東日本大震災復興の基本方針及び組織に関する法律案)の早期成立が明らかとなった。民主、自民、公明3党の衆院特別委員会の理事らが法案の修正協議を行い、政府が提出中の法案を取り下げ、復興庁の設立などの修正案に合意したからだ。来週中にも参院通過成立が見込まれる。しかし、検討内容は十分なのか。

■ 阪神淡路大震災の経験を踏まえた、被災者主体の復興を

5月20日、政府の法案に対し、日本弁護士連合会が意見書を提出している。被災者の人権と自律的な意思決定の尊重、原発災害の特質を踏まえた調査審議の自主性・独立性の確保や、復興会議などの人選を透明化することも求める内容だ。

「方針よりも理念が先に示されるべき」と兵庫県の津久井進弁護士は、同法案の根本的な問題点を指摘する。法律家として自身も1995年に震災を体験し、現在は阪神・淡路まちづくり支援機構事務局長を務める。その経験から、第一に「人間の復興」を尊重する大切さを説く。「生活の復興と被災者が自己決定できることが重要だ」。

また、同案は「先導的施策」を掲げるが、人口減少時代のむやみな大規模事業に津久井氏は警鐘を鳴らす。阪神淡路の復興では、国の補助金を求めて大きな施設をつくったが、建設に関して賛成・反対の住民対立を生んだ。現在、その多くは空洞化したり、赤字問題を抱えたりしているそうだ。一方で、住民主体で復興を遂げた町は、今も比較的うまくいっているそうだ。

■ 透明性ある組織づくりと情報公開を

津久井氏は、原子力災害に対する組織的な問題点も指摘する。衆院への提出案は「識者による調査審議を行う合議制の機関は、災害復興構想会議の審議結果を踏まえる」としているが、「専門家による調査機関が災害復興構想会議から独立することが必要。事故の経過を見てもそれは明らかだ」という。

こうした指摘は、修正法案に反映されているのか、その審議経過は国民には見えにくい。分かりやすい情報公開が望まれる。(オルタナ編集部=有岡三恵)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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