大規模リストラならCSRは語れない

このエントリーをはてなブックマークに追加

きょう5月29日、「パナソニックが、2012年度をメドに本社の従業員約7000人を半減する方向で調整に入った」と日本経済新聞が朝刊で報じた。

他の新聞も後追い記事を出しているので間違いないだろうが、下記は「この報道が本当ならば」という前提で論を展開したい。

以前、パナソニックのCSR室担当者から「企業の社会責任とは何か?」という小冊子を頂いた。パナソニックの前身である松下電器の創業者・松下幸之助さんが1974(昭和49)年、社員向けに書いたものだ。

21世紀に入って、日本でも「CSR(企業の社会的責任)」という言葉に注目が集まったが、幸之助さんは、その30年も前から、「企業の社会的責任」を唱えてきた。いや、おそらくは創業時から相当強く意識されていたに違いない。

その中に、こんな下りが出てくる。

--まだ会社が小さかったころ。よく社員の人に「外に行ってお得意先から『君のところは何をつくっているのか』と聞かれたら、『うちの店では人をつくっています。電気器具もつくっていますが、その前にまず人をつくっているのです』と答えたまえ」というような話をしたものです。

--企業の社会的責任を果たしていく上で、どうしても欠かすことのできない大切なものがあります。それは、人材の育成ということです。よく「事業は人なり」と言われますが、これはまことに当を得た言葉で、よき人材の育成なしには、企業は自らの社会的責任を全うできないでしょう。

この小冊子には、そんな「社員への思い」がたくさん綴られている。これとは別に、「1929(昭和4)年の世界大恐慌の時にも一人もリストラはしなかった、すると従業員が感激して全員でセールスを始め、山のような在庫がなくなり、生産が再開された」とのエピソードも残っている。

単純な感情論ではない。これまで、業績不振から多くの企業がリストラを進めてきた。今年も日本企業でも多くの事例が見られた。パナソニックだけを責めるつもりもない。

しかし、何千人ものリストラによって、たとえ短期的に利益が出たとしても、それは長続きはしないことを訴えたい。そのカギは、幸之助さんが説いてきた通り、企業の社会的責任(CSR)にある。

実は、CSRには三つの効用がある。それはES(従業員満足度)、CS(顧客満足度)、SS(社会満足度)だ。

「会社のためにたくさん働いた末路がリストラ」という事態を目の当たりにすれば、当然、従業員満足度は下がる。従業員満足度が下がれば、組織の生産性も落ちる。また、「大規模なリストラをたびたびする会社」という評価が定着すれば、顧客満足度にも影響しよう。

三つ目のSS(社会満足度)は、換言すれば社会からの評価だ。社会とは、地域、自治体、NPOなどの総体をさす。社会満足度とはすなわち「未来の顧客」づくりのための指標であって、それが下がることは「未来の顧客」をも失うことを意味する。

CSRとは、これらES、CS、SSを高めることで、中長期的な企業価値や業績を高めていくための作業である。(企業価値を高めるためのCSR ご参照)

従業員の削減は、近代的な経営手法として、洋の東西を問わず、多くの企業が実施してきた。その一方で、多くの従業員や家族が人生の再設計を余儀なくされた。企業の経営者は、そのことにも思いを馳せてほしい。(オルタナ編集長=森 摂)

2012年5月29日(火)16:05

alternaショップ
ページの先頭に戻る↑