「福島の問題は心の危機」――飯舘の小林麻里さん出版、田口ランディさんらエール

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原発事故の思いをつづった本を出版した小林麻里さん(右)と執筆を支援した田口ランディさん(右から2人目)

福島県飯舘村の福祉施設職員、小林麻里さんが原発事故への思いや避難の経験をつづった『福島、飯舘 それでも世界は美しい――原発避難の悲しみを生きて』(明石書店)を出版し、出身の名古屋市内で1日、記念シンポジウムが開かれた。執筆を支援し、「この本は21世紀の『沈黙の春』です」という一文を寄せた作家の田口ランディさんも駆け付け、原発について語り合った。

小林さんは2004年、結婚を機に飯舘村へ移住。夫婦で自然養鶏を営んでいたが、4年目の春に夫の彰夫さんをがんでなくした。村の一軒家で「ひきこもりような生活」になった小林さんは友人や村の自然に励まされ、田んぼづくりを始めたり、地域活動や仕事を見つけたりするまで立ち直りかけていた。

その矢先に遭遇した原発事故。彰夫さんとの記憶が残る大事な土地が見えない放射能で汚染され、計画的避難区域に。小林さんは福島市内の職場近くに避難しながら、チェルノブイリを描いた映画の上映会を企画したり、名古屋大学大学院環境学研究科の高野雅夫准教授らの研究に協力したりして、福島の状況や自らの思いを積極的に発信し始めた。

『福島、飯舘 それでも世界は美しい――原発避難の悲しみを生きて』(明石書店)

国や東電に対する怒りだけではなく、原発に頼る暮らしを享受していた自らの反省、植物を根こそぎはがそうとする除染に対する疑問、それでも変わらない自然の美――。独特の感性と哲学が田口さんや高野准教授に評価され、出版にこぎ着けた。

名古屋の友人らが催したシンポジウムで小林さんは「手塩にかけて育ててきた田畑が荒れ果てるのを見せられるのは飯舘の人にとって拷問に近い。いま起こっているのは心の危機の問題」と訴えた。

田口さんは「大飯原発の再稼働に反対するデモを空撮した写真がネットにあって、すごくきれい。国会を取り巻く人たちが銀河みたいで、自分もこの中の一つの星になりたいといったコメントが付いていた。みんなこの問題にかかわりたいけれど、どうしたらいいのかわからない。リアリティーの寄りどころを探している。麻里さんは問題の内側にいて、リアリティーをもっている。みんなに迎合せず、自分らしく苦労し続けて」とエールを送った。(オルタナ編集委員=関口威人)

 

2012年7月2日(月)11:53

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