記事のポイント
- 環境省は企業の生物多様性の保全に関する取り組みにお墨付きを与えた
- 企業が管理・所有する森など122区域を生態系保全エリアに認定
- 認定を受けたことで、企業はステークホルダーにアピールすることができる
環境省はこのほど、企業や自治体などの生物多様性の保全に関する取り組みにお墨付きを与えた。10月6日には、企業が管理・所有する森など122区域(35都道府県)を生物多様性の保全に貢献するエリアとして認定した。政府は、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系の保全区域にすることを目指す。この取り組みはその目標を達成するための一環だ。(オルタナS編集長=池田 真隆)
環境省はこのほど、「自然共生サイト」に認定した122区域を公表した。トヨタ自動車の「トヨタの森」(愛知県豊田市)やパナソニックの草津工場「共存の森」、東京建物の「大手町タワー」などだ。
これは、民間が生物多様性の保全を図ってきた区域を、環境省が認定する取り組みだ。今年度から始めて、毎年2回、認定区域を公表する予定だ。
環境省がこの取り組みを始めた背景には、国際目標「30by30(サーティ・バイ・サーティ」がある。2021年6月のG7サミットで各国が約束したものだ。
具体的には、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として保全する。日本の現状は、陸域で20.5%(2021年)、海域で13.3%(同年度)が保全区域だ。
各国は30by30を通して、2030年までに生物多様性の損失を食い止め、回復させる「ネイチャーポジティブ」の実現を目指す。
認定を受けた企業は、生物多様性の保全に貢献していることを社内外のステークホルダーにアピールすることができる。
環境省が自然共生サイトに認定した区域は、「OECM(Other effective area-based conservation measures)」として国際データベースに登録される。OECMとは、国立公園などの保護地区ではない地域のうち、生物多様性を効果的に保全している地域を指す。
■富士通、「直接的に30by30の達成に貢献できる」
富士通は沼津工場(静岡県沼津市)の認定を受けた。沼津工場は1976年の工場開設時から、工場緑化を進めていた。敷地内には、芝生庭園や茶畑、緑地を生かしたビオトープのほか、自然のままの樹林地などの緑地がある。
ヤギの放牧による除草や特定外来種の駆除、ビオトープでの日本古来種である「ミナミメダカ」の育成など、生物多様性保全についても積極的に取り組んできた。
同社の濱川雅之・総務本部環境統括部統括部長は、「自然共生サイトへの認定を受けると、OECMとして国際データベースに登録される。直接的に30by30目標の達成に貢献する活動となる」と話す。
同社は、第11期環境行動計画の中で、「サプライチェーンを含む自社の企業活動の領域において、生物多様性への負の影響を12.5%以上低減する(基準年度:2020年)。加えて、生物多様性への正の影響を増加させる活動を推進する」という目標を掲げる。
今回の認定取得を、「生物多様性への正の影響を増加させる活動」に位置付けた。