記事のポイント
- 日本船籍によるカツオ・キハダマグロまき網漁業が初のMSC認証を取得した
- カツオやマグロは需要が高く、乱獲が危惧されている魚種である
- 世界ではMSC漁業認証カツオ・マグロ類の漁獲量が急増してきた
共和水産(鳥取県境港市)と明豊漁業(宮城県塩釜市)がこのほど、日本船籍によるカツオ・キハダマグロまき網漁業でMSC漁業認証を国内で初めて取得した。カツオやマグロは需要が高く、乱獲が危惧されている魚種だ。世界ではMSC漁業認証カツオ・マグロ類の漁獲量が急増してきた。(オルタナ編集部・下村つぐみ)
今回、日本初となったのは「日本船籍」でのカツオ・キハダマグロまき網漁業のMSC漁業認証の取得だ。これまでは、カツオ・キハダマグロまき網漁業によるMSC漁業認証は外国船籍のみだった。水産関係のコンサルティングを行うUMITO Partners(東京・千代田)が支援した。
カツオやマグロは、刺身やツナ缶、鰹節など幅広い調理法があることから、世界的に需要が高い魚種だ。漁獲量も1976年から2020年までの間に2倍以上に増えているという。
一方で、需要が高いことに相まって、乱獲が危惧されてきた魚種でもあり、全海域のマグロ類を管理する、国際的な5つの地域漁業管理機関(ICCAT、CCSBT、IATTC、WCPFC、IOTC)によって管理されてきた。
国連なども海洋資源の減少に警鐘を鳴らし、持続可能な漁業への転換がより求められてきている。
2022年度のMSC年次報告書によると、世界のMSC漁業認証カツオ・マグロ類の総漁獲量は2017年度が100万トン未満だったのに対し、2022年度には260万トンを超えたという。MSCラベル付き製品の卸売金額は11.5%増加し、小売販売金額は124億ドル(約1兆8600億円)に上るとも推定された。
今回の認証は、MSC漁業認証の審査規格がバージョン3へと移行する時期と被ったことで、旧規格と新規格の一部ルールを用いた異例の審査だったという。審査から認証までには約3年かかった。
同認証のコンサルティング担当であるUMITO Partnersの福山哲司・生物資源科学博士によると、日本船籍のカツオ・マグロ類を対象とした漁業ですでにMSC漁業認証を取得している漁業関係者や水産庁、専門家総出で連携・対応したことで、前例のない特殊なケースにおいて、認証取得にこぎつけたという。
村上春二・UMITO Partners社長は、「世界的にはカツオ・マグロを対象とするMSC漁業認証取得が加速しており、MSC認証取得の顧慮の重要性がますます高まっている」と語った。