記事のポイント
- コクヨは、中長期的な成長を目指すためサステナ経営に舵を切った
- 働き方に関する困り事を特定し、商品を通してその課題の解決に取り組む
- 商品そのものより、企業理念や文化を押し出す
コクヨは、中長期的な成長を目指すためサステナ経営に舵を切った。働き方や暮らし方に関する困り事を特定し、商品を通してその課題の解決に取り組む。「なぜ」売るのかを深堀し、商品そのものより、企業理念や文化を押し出す。同社の梅田直孝・執行役員にその戦略を聞いた。(聞き手・池田 真隆=オルタナS編集長)
――商品そのものより、理念や文化を訴求していくことが重要だと考えたきっかけは何でですか。
1905年にコクヨは創業し、帳簿の表紙づくりから事業を始めました。そこから、「商品を通じて役に立つ」という創業精神に則り、文房具やオフィス家具など事業を展開してきました。
事業規模は安定して拡大してきましたが、日本経済が縮小すると企業価値も縮小することが目に見えてきました。事業領域を広げるか、もしくは変えないと存在意義がなくなってしまう。
こうした危機感を持って社内改革に取り組んだのが、2015年に新社長に就任した創業家出身の黒田英邦です。黒田の就任時、売上高は約3千億円、利益率2-3%と経営は安定していました。ですが、低成長のままでした。
人口が増えていく社会では、大量に多品種を生産することで成長ができましたが、今後、日本は人口減少が進み経済が縮小していきます。これまでの考え方が必ずしも通用するわけではない。低成長からの脱却を図らないと、持続的な事業活動にならないと考えたのです。
具体的には、企業理念の刷新や事業戦略の見直しを行いました。そして、2021年に2030年までの長期ビジョンを策定したのです。
――長期ビジョンの内容を教えて下さい。
新たな企業理念として、「be Unique.(ビー・ユニーク)」を掲げました。働き方や暮らし方が多様化する時代において、一人ひとりのニーズに応えていくことが会社の存在意義と定めました。
ポートフォリオも見直しました。総合メーカーとして、B2Bの流通基盤を基に発展してきた従来のあり方が「1本杉モデル」だとすると、これからは、多様な顧客のニーズに応えるため、「森林経営モデル」にシフトしていきます。いわば社会課題解決型の事業の集合体です。
■顧客体験の拡張、30年5千億円へ
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