セイコーエプソン「全世界100%再エネ化」、次のステップは

記事のポイント


  1. セイコーエプソンが全世界の拠点で使う電力を100%再エネに切り替えた
  2.  「地産地消」を原則とし、現地主導で国や地域に合った再エネ調達を進めた
  3. 次のステップとして、約1700社あるサプライヤーの再エネ活用に着手する

セイコーエプソンは2023年12月、国内製造業ではじめて(※)全世界の拠点で使用する電力を100%再生可能エネルギーに切り替えた。「地産地消」を原則とし、現地主導でそれぞれの国や地域に合った再エネ調達を進めた結果だ。次のステップとして、約1700社あるサプライヤーの再エネ活用に着手し「スコープ3」の温室効果ガス削減をめざす。渡辺潤一常務は「自社の100%達成は通過点に過ぎず、社会へのさらなる再エネ拡大に貢献したい」と語る。(オルタナ副編集長・長濱慎・撮影=山口勉)

※国内の「RE100」加盟企業を対象に確認(セイコーエプソン調べ)

渡辺潤一(わたなべ・じゅんいち)
セイコーエプソン常務執行役員。生産企画本部長 兼 地球環境戦略推進室副室長。1985年諏訪精工舎(現セイコーエプソン)入社。生産管理部長、ビジュアルプロダクツ事業部長などを歴任後、2014年取締役、16年生産企画本部長、17年常務執行役員。23年4月から、新設された地球環境戦略推進室の副室長を兼任。

■パリ協定を「企業の在り方を問う国際的な要求」ととらえる

――100%再エネ化を宣言したのが2021年3月で、それから2年10カ月という短期間での目標達成でした。

全世界の拠点で使用する電力を100%再エネに転換することを対外的に表明したのは2021年ですが、取り組みは2017年からスタートさせていました。当時、セイコーエプソン全体の温室効果ガス排出量の約7割が、電力由来によるものでした。

すでに気候危機の問題が顕在化しており、脱炭素は喫緊の課題となっていました。そして私たちは、2015年12月に採択されたパリ協定を「今後の持続可能な社会をつくる企業の在り方を問う国際的な要求である」ととらえたのです。

動きが早かったのは欧州です。英国の生産拠点をはじめフランス、ドイツ、オランダ、イタリア、スペインなどの販売拠点は、2021年までにほぼ再エネ化が完了しました。オフィスビルに入居する拠点についても、テナントと交渉して切り替えを進めました。

オランダにある欧州統括会社のトップからは「環境課題に取り組むことこそが企業価値を向上させ、製品の売上にも貢献する」と言われました。欧州連合(EU)が政策として早くから再エネ化を推進していたことも、後押しになったと思います。

再エネ電力比率が1%程度に過ぎなかった2017年から6年で100%に

■フィリピンは火山の地熱、インドネシアはヤシ殻を活用
■日本国内は水力発電の新規開発にも貢献
■自社所有の太陽光やPPA、証書も活用
■社会への再エネ拡大は「スコープ3」削減につながる

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S.Nagahama

長濱 慎(オルタナ副編集長)

都市ガス業界のPR誌で約10年、メイン記者として活動。2022年オルタナ編集部に。環境、エネルギー、人権、SDGsなど、取材ジャンルを広げてサステナブルな社会の実現に向けた情報発信を行う。プライベートでは日本の刑事司法に関心を持ち、冤罪事件の支援活動に取り組む。

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キーワード: #脱炭素

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