セイコーエプソンは2021年11月、国内拠点で使用する電力の100%を再生可能(自然)エネルギーに切り替えた。21年度中という当初目標を4カ月前倒ししての達成で、国内の製造業としては最速(※1)だ。23年中には、全世界の拠点で100%切り替えを目指す。スピード感ある再エネシフトをどうやって可能にしたのか。担当の瀬木達明常務と、木村勝己部長に聞いた。(聞き手・オルタナ編集部=長濱 慎)

※1:国内の「RE100」加盟企業を対象に確認(セイコーエプソン調べ)

瀬木達明・取締役常務執行役員 経営戦略・管理本部長兼サステナビリティ推進室長

■環境対策は当社の「一丁目一番地」

――セイコーエプソンは「サステナビリティ(持続可能な)経営」をどう捉えていますか。

瀬木:当社は1942年に長野・諏訪市で創業し、創業者の山崎久夫には「諏訪湖を汚すことがあってはいけない」という強い想いがありました。その想いは約80年にわたり「地球を友に」という現在の経営理念に示す通り、脈々と受け継がれてきました。いわば環境は、当社のサステナビリティ経営の「一丁目一番地」といえます。

2020年4月に社長に就任した小川恭範は、長期ビジョンの「Epson 2025 Renewed」を打ち出すとともに、「環境ビジョン2050」(08年策定)を改定し、2050年に「カーボンマイナス」と「地下資源消費ゼロ」(※2)という目標を掲げました。

※2:資源循環を通して、原油や金属などの枯渇性資源の新規採掘をゼロにする。

「カーボンマイナス」は、「温室効果ガスの削減量が排出量を上回る」ことを意味します。経営会議では「カーボンニュートラルで良いのでは」という議論もありましたが、より高みを目指す決意表明として「カーボンマイナス」としました。

喫緊の課題である気候変動対策については、18年にSBT承認(※3)を取得したのを皮切りに、19年にTCFD(※4)への賛同表明を行い、21年には「RE100」(※5)に加盟しました。

※3:SBT(科学と整合した目標設定)とは、「パリ協定」の目標達成に向けた温室効果ガス排出削減目標。 CDP、国連グローバル・コンパクト、WRI、WWFによる共同イニシアチブ「SBTi」が運営している。

※4:TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)とは、気候変動に対する企業の対応について、情報開示を行う枠組み。G20(主要20ヵ国・地域)の要請を受け、金融安定理事会(FSB)が設立した。

※5:RE100とは、使用する電力の100%再エネ化を目指す国際的な企業連合。21年12月現在、世界300社以上(日本は63社)が加盟している。

■長野・山形・秋田で一挙に再エネ化

木村勝己・生産企画本部CS品質・環境企画部長

――「カーボンマイナス」を目指す中で、国内拠点をどのように100%再エネに切り替えたのでしょうか。

木村: 当社の場合、自社のスコープ1と2(※6)を合わせた温室効果ガス排出量のうち、電力使用によるものが約70%を占めており、削減には再エネ化が必要不可欠です。

※6:スコープ1は自社内での排出(主に化石燃料の燃焼)、スコープ2は社外から購入するエネルギー(主に電力)による排出。これに対し、後述するスコープ3は自社以外のサプライチェーンでの排出のこと。

そして、プリンターの開発・製造をはじめとする主要拠点は長野と東北の山形・秋田エリアに集中しており、全社の電力使用量の90%以上を占めています。この2地域を一挙に再エネ化したことが、「100%切り替え」という目標を達成できた要因です。

長野では21年4月、使用する全ての電力を長野県企業局が運営する17ヵ所の水力発電に切り替え、100%県内産という「再エネの地産地消」を実現しました。電力は中部電力ミライズ(中部電力の販売子会社)から購入しています。

電力メニューは「信州Greenでんき」と名付けられ、当社が支払う電気料金の一部を県内の新たな再エネ電源の開発に活用する仕組みも構築しました。このような自治体、電力会社との連携を通して、日本国内の「脱炭素化」を牽引していきたいのです。実際、県内では当社に続いて再エネに切り替える企業が出てきており、着実な広がりを感じています。

一方の東北も奥羽山脈を中心に再エネの宝庫で、水力と地熱による電力を東北電力から購入しています。東北においても長野県同様に長期契約を結び、長期間にわたって安定的な量を安定的な価格で購入できる見通しです。

■電力の「長期契約」で本気度を示す